毎回、性別、年齢を問わず、“ 今、耀いて人生を送っている方
 にフォーカスしておおくりしているインタビューですが、 

 今回は、歯科技工士冨田 由香さん にお話を伺いました。
 
 冨田さんは、東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科技工部
 の歯科技工士として、第一線でご活躍されていらっしゃいます。




その先にある、患者さんの笑顔が見たい・・・

器用さよりも、学ぶ気持ちを

ロズリン:
歯科技工士としてのキャリアはどのくらいになりますか。

冨田:
もうすぐ17年になるところです。
    高校卒業後は、
何か資格のある仕事がしたかったので、最初は看護師に
    なろうかとも考えていました。

    ですが、当時アルバイトをしていた歯科クリニックに併設された技工室で、
    先生ご自身が簡単な技工物を作っていらしたのを見て、
    「こういうものが作れるんだ、こういう仕事があるんだ!」 と知りまして。

ロズリン:もともと、手先が器用だった?



冨田:実は、どちらかというと不器用なほうなんですが、手で細かいものを作る
    ことに興味があったので。
    高3になってから急遽、1校だけ歯科技工士の専門学校を受験して、合格
    しました。

ロズリン:技工士に必要な能力、素質といったものは、特にあるのでしょうか。

冨田:仲間うちでは、「上手い技工士ほど、不器用だよね」 と話しています。
    技工士は言わば職人なので、器用さよりはむしろ技術を学ぼうとする気持
    ち、経験を重ねてコツコツ積み上げていく姿勢のほうが大事なんですね。

    私も卒業したての頃は何もできず、先輩から毎日教わりながら、作って作っ
    て、ひたすら作り続けてここまで来ました。
    技術の優れた人は例外なく努力していますし、身体で覚えるしかないことを
    分かっています。最初から上手に出来る人はいませんから。


QOL(生活の質)を支える歯科技工の仕事

 ロズリン:技工物というと、具体的には入れ歯とか、
        歯を削った後の詰め物などと考えていいの
        でしょうか。

 冨田:入れ歯のほか、むし歯の治療後に使う金属や
     セラミックなどの充填物、前歯の審美を回復する
     ための被せ物、歯列矯正の装置、インプラント関係
     のパーツ、また事故による外傷や病気のために欠損
     した部分の機能を補ったり、生まれつき口蓋に障害

のある赤ちゃんのための補助具など、口の中で使用するものはほぼ、何でも私たち
技工士が作っています。

このように内容が多岐にわたるので、学校にいる間だけで全ての技術を習得すること
はとても無理ですから、仕事の現場でも学び続ける、という覚悟が必要ですね。

 
 ロズリン:実際の作業手順を簡単にご説明いただけますか。

 
 冨田:あらかじめ、歯科医師が患者さんから採った
     「印象(いんしょう)」 と呼ばれる歯型をもとに、
     私たち技工士が石膏で模型を作ります。

さらに回復する必要のある部分の型をワックスで製作し、そのワックスを鋳型に
入れて鋳込むなど、各素材に置き換えて、磨いて完成させます。

また近年では、デジタル化が進み、コンピューター支援による技工物の製作も
増えてきています。

  

ロズリン:細かいプロセスを経て、一つひとつていねいに作られるものなんで
      すね。普通、私たちが目にするチャンスがないのが残念です。

冨田:確かに、私たちの仕事ぶりを紹介できる機会がもう少し増えるといいの
    かも知れませんね。


職人としての勘が活きるとき


 ロズリン:現在のような白いセラミック素材が普及
       する以前は、いわゆる “金歯・銀歯” の人
       が目立ったものですが、今でも金属素材の
       需要は多いのですか。
 
 冨田:今のところ、セラミックが使用できるのは自費
     診療だけなので、金属で作る仕事も続いて
     います。

ロズリン:最近は、インプラント(人工歯根の付いた義歯)による処置を希望する人も
      増えているそうですね。
      すると従来の入れ歯の需要は、それによって減っている?


 冨田:インプラントは入れ歯よりも自然で違和感が
     少ないなど、メリットの大きさが強調されて
     います。

     ただ、土台になる骨がやせてしまっていると
     難しいし、適した条件がいろいろあるので、
     全ての人が選べる治療方法ではないんです。

     ですから高齢者をはじめ、入れ歯の需要は
     まだまだあります。


             仕事場で。 「入れ歯」製作中!
        

ロズリン:歯の色については、審美的な立場からも非常に関心が高まっていますが。

冨田:最近は若い人たちだけでなく、かなりご高齢のかたにも白い歯が好まれる
    ようになってきています。
    以前は、お年寄りが入れ歯を作るとなると、あまりに白くてきれいな歯は
    遠慮もあって敬遠される傾向がありましたが、そのあたりの意識が変わ
    ってきましたね。

ロズリン:その人本来の自然な歯の色を作り出すのは、とても難しいでしょう?

冨田:本当に難しいです。
    私たちは患者さんの歯の色を表現するためにシェードガイドと言われる
    色見本を使用していますが、それらを参考にし、複数のセラミックを配合し、
    色を再現しています。

    完成時にその色調を再現するには、調合作業の経験による勘が決め手に
    なります。

ロズリン:患者さんに直接会って作るといったことは?

冨田:技工士は基本的に治療には携わりませんが、患者さんの歯の色を実際に
    見て合わせる事もあります。

    より質の高い仕事をするためには、歯科医師や衛生士さんとのコミュニケー
    ションはもっと必要だと思っています。




 冨田さんの大事な七つ道具。
  
 いつもきちんとご自身で手入れ
  
 されていらっしゃいます。


  

   さて、インタビューは後編へと
   続きます。お楽しみに!