7月10日にアップした第10回インタビュー後編です。

 今回は、歯科技工士冨田 由香さん をお迎え
 しています。
 
 冨田さんは、東京医科歯科大学歯学部附属病院
 歯科技工部歯科技工士として、第一線で活躍されて
 いらっしゃいます。   


進化を続ける素材&技術

ロズリン:歯科材料そのものも、新しい素材の開発や改良で、ずいぶん進歩
       しましたね。

      

冨田:本当にそうですね。例えば、昔はセラミックのみでは強度が足りない
    ので、金属で土台を作って支えていたものですが、改良が進んで、
    今ではジルコニアと呼ばれる高強度セラミックで、金属を使わない
    審美修復が注目されています。

    非アレルギー素材であるチタンなども普及して、日進月歩ですよね。
    材料が進化したおかげで、仕事が効率化され、はかどるようになったのは
    私たちにとっても大変ありがたいことです。

    最近は職場にCADカムを導入したので、より精密な作業が可能になり
    ました。 もちろん、そのための勉強にも全員で取り組んでいます。

ロズリン:これからの時代、やはりそうしたハイテク化の波は避けて通れない?

冨田:機械化で人の仕事がなくなるのでは、と、つい心配しがちですが、そんな
    ことは決してないと思います。

    機械の力を借りたとしても、やはり手作業は必要なものです。
    新しい良いものは、積極的に採り入れていくべきではないでしょうか。


人との出会いが、天職への目覚めに

ロズリン:今の大学内の職場に移るきっかけになったのは?

 冨田:最初に就職した個人クリニック内の技工室
     では一人の先輩について勉強しながら4年間、
     健康保険が適用される金属歯などを主に
     担当していました。

     自転車操業のように慌ただしく仕事をこなす
     毎日でしたが、あるとき有名な技工士に出会う
     機会があって、その人のもと勉強するうちに、
     その仕事ぶりや姿勢に感激しまして…

     そこから、自分の仕事に対する考えが大きく
     変わり、技工士の仕事についてもっと真剣に
     向き合い、深めたいと思うようになりました。

ロズリン:大切な出会いでしたね。もしその人に会わなかったら…。

冨田:今、こうしてはいませんよね。まさに転機だったと思います。
    
    大学病院では患者さんの幅も広く、症例も多いので、それだけ仕事にも
    幅が出て勉強になります。 今も同じです。

 私、学生時代はあまり真面目じゃなかったから(笑)、
 後で同級生が「由香ちゃんがこんなに続くとは…!」って
 驚いたくらいです。
 17年近くも続けてこれたのは、この仕事自体が本当に好き
 なんだろうと思います。
 
 自分が手がけているこの仕事の先に患者さんの喜ぶ顔が
 あると思うと、そのこと自体が嬉しく思えるんです。


続けることで拓ける未来

 ロズリン:技工士の専門学校には、毎年どのくらい入学して
       いるのですか。

 冨田:少子化の影響もあるでしょうが、確実に減っています。
     ですから技工業界は求人難ですし、若い人の離職率も
     高いのが悩みです。
     職人としての修業がつらく、どうしても続かないという
     ケースも考えられます。

ロズリン:最近は女性の歯科医師が増えましたが、技工士の世界はどうでしょう。

冨田:入学する人は男女半々といったところで、やはり女性の割合は増えています。
    私の職場も17名中で女性が5名いますが、昔はとても少なかったと思います。



ロズリン:今、ベテランの冨田さんから、若い人にメッセージを送るとしたら。

冨田:失敗したり、学ぶことがあまりにも多くて悩んだとしても、そういう時期は
    誰にでもあるし、そこを乗り越えれば必ず笑えるときがくる、と言ってあげたい。
    厳しい世界ですが、とてもやりがいのある仕事ですから、ぜひとも続けて
    ほしいです。


女性のパワーを活かす職場環境とは

ロズリン:
冨田さんご自身も、お仕事に、育児にと多忙な毎日だとか。

 
 冨田:3歳の子どもを自転車で保育園に送り
     迎えしたりして、なんとかどうにか…。
     
     でも、家事のほうはちょっと、おろそか
     かな(笑)。

     休日はあちこち出かけたり、ママ友達と
     おしゃべりして過ごすことが多いです。


主人は同じく歯科技工士ですが、独立開業しているのでとても忙しいです。
年に1回は家族3人で旅行するなどして、リフレッシュしています。

ロズリン:ご主人もご同業なら、理解し支え合う仲間として理想的ですね。
      仕事と家庭を両立させるには、職場環境に恵まれていないと難しい
      のが現状ですよね。

冨田:今の職場で、産休・復職が可能だったのは、周囲の理解と、先輩の前例が
    あったおかげです。

    私自身、この仕事をこれからも長く続けていけたらいいなと思っていますから。
    今は厳しくて大変でも、好きだからがんばって、続けて…
    そして、いつか晴れて一線を退いた後には、家庭菜園などして、のんびり
    くらしたいです。



ロズリン:海外では?

冨田:最近では、世界各国に渡って歯科技工士として活動している日本人が何名
    もいます。もちろん女性も。 
    女性の活躍の場は、日本国内に限らずもっともっと広がる可能性があると
    思いますよ。

    まだサポート体制として完全に確立してはいなくても、いろいろな分野で女性
    が働きやすい環境が整いつつあるのは心強いことです。

    若い人たちも、希望を持って後に続いてくれれば嬉しいです。

<インタビュー感想>

「歯科技工士」というご職業は、読者の皆さんにとっても、私もそうでしたが、
今まであまり馴染みがなかったのでは。

実際お話を伺えば、歯科医師のように患者さんの口腔内に手を触れることはない
ので、患者さんと接する機会も少ないようですね。

患者さん自身の歯の色に近づける為、まずは紙上でデッサンをしたり、異なる色味
の材料を幾重にも重ねて微妙に調整したりと、どちらかといえばアーティストに近い
職業だと感じました!

年月を重ねてこそ、その経験が活きてくる職業だけに、若い方で長く続かない方も
いらっしゃるそうですが、このブログを見て、歯科技工士のお仕事に興味をもって
いただける方が少しでも増えれば嬉しいです。