今回は、室内オーケストラ「
東京シンフォニア
の主催者である 
指揮者のロバート・ライカー(Robert Rÿker)
さん
にお話を伺いました。



ライカーさんは、1981年に来日して以来、才能あるプロの演奏家を
率いてオリジナリティあふれるコンサートを企画・開催してきました。

そして2005年に設立した小編成の室内オーケストラ
東京シンフォニア」は、上質なクラシック音楽をより身近なもの
としてアピールする新しいスタイルが話題を呼び、幅広い世代にファン
層を広げています。



大きな違いの小さなオーケストラ

クラシック界のチャレンジャーとして

ロズリン:カナダ出身のライカーさんは、私と同じく日本に長いことお住まいですね。
      これまで日本の人たちのクラシック音楽との関わり方を見ていて、どんな
      ことを感じますか。

ライカー:日本では、クラシック音楽のコンサートというと、服装やふるまいのルール
      が厳しそう、詳しい知識がないといけないのでは… などと心配したり、
      緊張して構える人が多いようです。
      
      もちろん、常識的な節度は保っていただきたいものですが、あまりにも敷居
      が高くなり過ぎている傾向がある。
      そこで私は、そうした既存のスタイルや決まり事を壊し、もっと気楽に楽しめる
      クラシックのコンサートを作るべきだ、と考えました。
      
      それは、日本に初めて来たときからすぐに実感したことです。



ロズリン:30年近くも前ですね。当時としては、かなり斬新な考えだったのでは?

ライカー:当時の日本のクラシック界には外から入り込む余地がなく、長いこと
      認められませんでした。
  
      自分のオーケストラをつくりたい、との強い思いは来日当時からずっと
      持っていましたが、プロジェクトを立ち上げた途端にバブルの崩壊で
      頓挫して… などと、構想はたくさんあるのに、どれもすんなりとはいか
      なかったのは事実です。

 
 ロズリン:今でも日本で新しいことをやろうとすれば、
        誰であれそれなりに苦労が多いものです
        よね。

 ライカー:しかし私自身は、いつもあえて厳しい選択
       をするところがあって、そのつど崖を這い上
       がってきたような気がしています。

       刀を鍛え直すがごとく、困難な課題を克服
       してきたというのかな。

やっと今の年齢になって、やりたいことが形になって実現したと思っています。
周囲に乞われるがまま活動するだけで満足していたら、何も変わらなかった
でしょう。


古くて常に新しい、それがクラシック

ロズリン:設立から4年になる「東京シンフォニア」は、ユニークなスタイルの室内
      オーケストラとして注目されています。 そのメインコンセプトは。


 
ライカー:大きな違いの小さなオーケストラ” として、小編成ながら最大限に
      豊かな音楽を創り出すのが狙いで、発足時から19名の編成です。

      従来のフルオーケストラに比べると少人数ですが、表情のあるあたたかい
      音づくりを心がけており、より豊かな音づくりのために楽器の各パートの
      配置を見直すことで、音のバランスがとれた美しいハーモニーを生み出す
      ことに成功しました。

      そして、メンバーの一人ひとりを大切にすることで “全員がソリストである
      と宣言しています。

ロズリン:そうした音質へのこだわりと計算は、あまり前例のない試みですね。
      演奏する曲目についても、特色があるのでしょうか?



ライカー:日本のクラシックファンは一般に保守的で、コンサートというとおなじみの
      曲目ばかりに演目が集中しがちなのは残念ですね。

      もっとも、演奏会のメインになるような室内オーケストラ曲自体が少ないと
      いう事情もあります。 
      しかし調べてみると、著名な作曲家の作品の中にも、めったに上演されない
      室内楽曲がたくさん埋もれていることが分かったのです。

      それを室内オーケストラ用としてオリジナルに編曲すれば、多くの人々に、
      これまでにはなかった室内オーケストラ曲の素晴しさを知ってもらう機会が
      できます。

      そのように、なるべく多くの人にアピールできて喜ばれるものをテーマに
      イメージをふくらませ、ありきたりでない、耳に新しい曲目によるプログラム
      を組んでいます。


大切なのは裾野を広げること

ロズリン:この9月から、私たちサンギも協賛することになった銀座の王子ホールでの
      コンサートは、クラシックに詳しい人の間でも良い評価を得ていますが、他に
      もディナーとセットになったシリーズは、クラシックのコンサートとしてはとても
      ユニークな企画だと思います。

 

ライカー:小さな空間でできる室内オーケストラならではのアイデアです。

      従来のように堅苦しく緊張しがちな大ホールでのクラシックコンサートで
      はなく、小回りが利くメリットを活かして、フレンドリーかつアットホームな
      雰囲気を大切にしています。
     
      私自身が挨拶や曲目紹介などをするのも、客席との距離感をできるだけ
      なくそうという工夫の一つです。

      ディナーとホール、客層はそれぞれ違いますが、皆さんが気軽に楽しめる、
      肩の凝らない内容を考え、その点に常に心を砕いているつもりです。
      ですから今後は、クラシック音楽にはあまり縁が無かった人にも、ぜひ足を
      運んでもらえるものにしたいですね。

ロズリン:
そうなれば、大きな目標の一つをクリアしたことになりますね。

ライカー:そう、“リラックスすること” にメインフォーカスしていますから。
      どう聴いてもらうかは重要ですが、また再び戻って来てもらえるかもまた、
      同じように重要な課題ということになるでしょう。


 




 さてインタビューは後編へと続きます。
 お楽しみに!