室内オーケストラ 「東京シンフォニア」 の主宰者である、
指揮者のロバート・ライカー(Robert Rÿker)さん
をお招きしてのインタビュー後編です。


東京シンフォニア」は、上質なクラシック音楽をより身近なものとして
アピールする新しいスタイルが話題を呼び、幅広い世代にファン層を広げ
ています。

アパガードはこの度、9月18日に開催される銀座王子ホールでのコンサート
から、ゴールドスポンサーになることが決定しました。
詳しくは東京シンフォニアのWEBサイトをご確認ください。



寄り道もまた人生の糧

ロズリン:
オーケストラの指揮のほかに、ご自身で楽器の演奏は?
 
ライカー:11歳のときにチューバを始めたので、音楽のキャリアは50年です。
      でも、音楽活動から全く離れていた
時期もあったんですよ。
      実は高校のとき、卒業したら工学系に進もうと考えていました。橋を造ったり
      するようなことにも興味があったので。
      ただチューバは楽しかったから、高校時代まで音楽活動は続けていましたが。



ロズリン:工学系か、音楽か…これは悩める選択ですね。
 
ライカー:卒業前に参加したサマースクールのキャンプで、トランペットを吹いている
      きれいな女の子がいたんです。 ミス・インディアナにも選ばれたという、大変
      な美少女だったんですよ(笑)。

      その彼女に 「卒業したらどうするの?」 と訊かれたので、私は 「工学部に行っ
      て、橋とか造ろうと思う」 と答えた。
      すると彼女 「じゃあ、音楽はどうするの?」 …

      結局はそのひと言がきっかけで、2週間後に急きょ方向転換して音大に進み、
      指揮者として博士課程まで修めました。

 
 ロズリン:
その後、そのまま音楽の仕事に就いたのですね?

 ライカー: …ところが私は自分を売り込むことが得意でなかった
       ので、しばらくは普通に就職して働いてはどうかと思い、
       セールスマンを経験したこともありました。

 ロズリン:セールスマンですか?また音楽とはかけ離れた職業
      ですね。


ライカー:ですがやはり営業の仕事と音楽は両立できないと、結局はすぐに音楽に
      専念する決心をしました。

      当時の上司はまだ働きはじめたばかりで残念がっていましたが、そうしてまた
      音楽の世界に舞い戻ったわけです。

ロズリン:音楽への思いを、また強くされたのでしょうね。


  
 ライカー:実際には、私のプロの音楽仲間にもそういう
       経歴を持つ人は少なくないんですよ。
       
       学生時代は化学を専攻していて、今はトラン
       ペットの担当だったり…

       そうそう、文学部を出たのに、今は歯みがき剤
       を作っているという知り合いもいますよね(笑)。





作り手と受け手が交流する場を

ロズリン:音楽を教える立場としての経験もありますか?

ライカー:もともと教えることは好きなので、音楽教師として幼稚園から大学院まで教鞭
      をとったことがあります。

      しかし“マエストロ(=監督、または先生)”と呼ばれるのがどうにも嫌いなので、
      できれば“ロバート”とか“ライカー”などと呼んでくれるよう頼んでいます。
      そのほうがフレンドリーだし、家族的でしょう。

ロズリン:親しみやすさは、東京シンフォニアにおけるテーマの一つでもありますからね。
      聴き手の側に少しでも近づきたいという…。



ライカー:前にも言いましたが、日本で行われるクラシックコンサートのプログラムは、
      聴き慣れた人気の曲でまとめる形が主流です。
      しかしそのように無難で狭い選択肢しか持たないでいると、永遠にその枠から
      抜けられません。
      欧米の場合だと、もうちょっと冒険しようとする気持ちがあるようですが。

      だから私は、少しずつでも、お客様を別の新しい世界へ連れ出していくことが、
      自分の使命と考えているんです。

      もとは4~5人の小さいアンサンブルのための曲やピアノ曲などのすぐれた
      作品を見直し、室内オーケストラ用にアレンジすることで光を当て、甦らせる
      という…そして対等な目線で対話する場を設けることで、言葉を超えた部分の
      表現もまた伝わればいい、と。


 






 編曲や作曲の際はPCを使い、
 またその際は、指揮同様立って
 取り組まれるそうです。



ロズリン:
クラシック音楽は古いどころか、常に新しい可能性に満ちているんですね。


良質な音楽にたくさん触れよう

ロズリン:今でも、チューバを演奏されますか?

 

ライカー:それはもうないですね。…
      どうがんばっても “現役” 当時のレベルには戻れませんから。
      しかし、音楽の夢を見るときは必ずチューバが出てくるくらい、今でも私の
      大切な一部であることに変わりはありません。

ロズリン:その後の人生に、大切な役割を果たしていると。

 ライカー:こうしたことは、とても重要です。
       例えば、私は5歳のときに保育園で
       聴いたチャイコフスキーの 「くるみ割
       り人形」 の 「序曲」 の美しさに心を打
       たれ、今でもこの曲が大好きです。
       それほど、幼いときに触れた音楽の
       記憶は大切だということです。
       小さな子どもにモーツァルトを聴かせ
                   ると知能の向上に役立つという
                  “モーツァルト効果” が話題になったよ
                   うに、人の心に有益な音楽があれば
                  そうでない音楽もあることは、科学的に
                  実証されているといいますね。


ロズリン:
音楽が人に与える影響は、思っているよりずっと大きいと言われる所以ですね。

ライカー:あるとき私は、スーパーのレジに並んでいて、店内に流れるBGMの異常なやか
      ましさに我慢できなくなり、買い物をやめて外に出てきてしまったことがありました。
   
      それとは反対に、とあるエレベーターの中で流れていた音楽の心地よさに、一瞬
      自分がどこにいるのか分からなくなったこともあります。

      それほど、音や音楽は心に様々な作用をもたらすものなのです。



ロズリン:東京シンフォニアでは、ご自身で編曲を手がけたり、楽器の配置構成を刷新
      するなど、斬新なアイデアをクラシックの世界に導入してこられました。

      楽団を統率する指揮者として、これから目指す方向は。

ライカー:レベルの高い個々のプレーヤーを一つにまとめ、どうやって美しい音楽をつくる
      かは永遠の課題です。

      美しいといっても、聴き手の側それぞれに、その時々で美しいと感じるものは違
      います。 指揮者自身の立ち姿、服装、表情や指揮のスタイルなどによっても、
      プレーヤーに伝わるものは全く違ってきます。

      指揮棒から音が出ない分、それらを手段としてプレーヤーに伝え、自分が頭に
      思い描く音楽をいかに実際の音にするかが最大の目標です。

      その上で、1人でも多くの人にクラシックの楽しさと魅力が伝わるような、幸福な
      出会いを重ねていけるよう、心から願っています。

   銀座王子ホールでのコンサート


<インタビューの感想>

 この9月から、ご縁があって我々アパガード(サンギ)も東京シンフォニア
 ゴールド・スポンサーとして協賛させて
いただくことになりました。

 クラシック音楽が苦手とおっしゃる方も、ライカーさんが指揮するコンサートへ、
 ぜひ一度足を運んでいただきたいです!

 また新たなクラシックの世界が広がるかもしれませんよ。