今回はSE(システムエンジニア)で、現在は
 
 日本ユニシス株式会社技術統括部副部長
  (プロジェクト・マネージャー)としてご活躍の
 白井久美子さん に、

 ビジネスの最前線で輝き続けるリーダーとして、
 働く女性の意識と環境の変化、また人を育てる
 マネジメントの秘訣について伺いました。



自分なりのワークライフ・バランスを見つけよう

英語を武器に、未知の世界へ
 
ロズリン:白井さんは、ずっとこのIT業界でお仕事をされていらっしゃいますね。
      入社当時はITの先駆けという時代、なぜこの世界(SE)に入ったのですか。

白井:最初はそういう職種があることさえ知りませんでした。

    大学では英語が専攻で、英語教師を目指していました。当時自分なりに教育に
    対する理想や考え方があったんですが、教育実習をやってみて、理想と現実と
    いいますか、それを実現することの難しさを実感し、そこから改めて進むべき道
    について悩みました。

    先輩からのアドバイスや、大学の就職課での相談などを通し、自分は分析や
    調査などが好きだと言うことを自覚しました。

    そこで「紙と鉛筆があればできるものがある」と教えられたのが、当時生まれて
    間もないSEという仕事でした。



ロズリン:文系のご出身とは、ちょっと意外です。

白井:学生時代、アルバイトでテニスのコーチをしていて、そこに通信衛星の
    コンピュータ制御の技術者のかたを教える機会があったんです。

    私が「もうすぐ就職なんだけど」と言うと、NHKのコンピュータルーム内を見学
    させてもらえることになりました。
    そこで文系の自分にもできそうな気がしてSEに興味を持ち、現在の日本ユニ
    シスの前身、日本ユニバックに入社が決まりました。

ロズリン:白井さんが入社された1985年当時は、コンピュータがまさにこれから社会
      に普及していく時期だったかと思います。
      
      基本的な知識全部は入社後に身に付けたのですか。

白井:社内研修で一から習いました。
    使うのは主に数字と英語なので、学んだ英語がここで役立ちました。

    アメリカのシステムを日本語化して販売する際、文献や仕様書を原文で読む
    必要もありましたし、いろいろな交渉にも英語力は不可欠。

    今ならネット記事やメールのやりとりにも、英語は重宝です。

ロズリン:留学のご経験は?

白井:残念ながらできなかったんです。
    本当は現地駐在員になりたくて、自分から希望も出してはいたんですが、当時
    は女性だとなかなかチャンスに恵まれませんでした。

    今でも女性管理職は少数だし、IT業界というのは、基本的には男社会と言え
    そうですね。




 ITビジネスの基盤を創るSE

 
 ロズリン:SE ” とは、具体的にどういったことを
       する職種ですか?


白井:建築の世界に例えると、設計、構造計算、施工、内装…と、それぞれの分野に
    枝分かれするように、コンピュータ関係の仕事も、例えばプログラマー、システ
    ムデザイナー、アーキテクト、プロジェクトマネジャなど多岐にわたります。

    それらを総称するSEはいわば全体を設計・構築・統括する “ 建築士 ” に相当
    するもので、システムの企画・設計・開発・テストを経て納品までを手がけます。

    現代のビジネスの根幹を支える、“ ITの建築士 ” のような存在だと考えてください。

ロズリン:システム 」 とは、具体的に言うと例えばどのようなものが?

 白井:ユニシス自体は個人向けのPCを製造しておらず、
     あまり企業名が知られていませんが、お客様には有名
     な会社が多くあります。

     例えばANAの " 予約~発券~搭乗 " を行う予約システム
     や、サッカーくじの toto 、コンビニのインターネットを利用
     した商品宅配サービス等々に関わっています。
     他にも特殊なものでは、自動車の車体の金型を設計する
     3次元CAD(Computer Aided Design)といったものも
     あります。

ロズリン:この業界の中で、これまでで一番大きな進歩とは、何だと思いますか? 

白井:銀行のオンラインシステムの開発などが主だった頃は、一件の開発に何百人も
    客先に昼夜つめて数年がかりといった非常に大掛かりなものでした。

    日々の仕事のやり取り一つとっても、ネットやメールが今ほど普及していない
    時代は、時間も手間も相当にかかっていました。

    今ではインターネットのおかけでぐっと効率化され、これは一番大きな進歩でしょう。

    昔は部屋いっぱいに大きかった汎用コンピュータもどんどん小型化され、その
    ほとんどの機能が小型のサーバやノートパソコンに集約できるほどになっている
    ことなど、システムが稼動する環境は劇的に変わりましたよね。

    テクノロジーの目覚ましい革新には本当に驚くばかりです。


がんばってるのに報われない…?
 
ロズリン:白井さんは、現在はプロジェクト・マネジメントのスペシャリストとしても
      ご活躍されていますね。

      部下の能力を見極め、意思の疎通を図ることの難しさは私自身も痛感
      していますが、人をまとめる立場において苦労されていませんか。



白井:人を束ねて結果を出す際、自分を生かすか殺すかの選択を体得するのには、
    数年を要しました。

    また、女性の管理職に対するバッシングも、少なからずおどろきました。

ロズリン:話には聞きますが、やはり…!

 白井:がんばってるから味方してくれる、とは限らないん
     ですよね。 しかも、女性の部下のほうが厳しかっ
     たりしますから。

     仕事を第一に優先することへの反発とか…。

     部下との面談で、いきなり
     「 私は白井さんみたいになりたいとは思わないです!」
     と言われたり、

「何でそんなに働くんですか。迷惑です!」 のような激しい抗議文面のメールを受け
取ったこともあります。
 
ロズリン:それはまた手厳しい。

白井:そうした厳しい抗議の背景には、こんな事情があったと記憶しています。

    働く母が育児と仕事を両立させ目いっぱい仕事をするには、様々な制約条件
    をクリアしないといけません。
    それなのに、事情を知らない男性上司が制約が多くて両立に苦労している女性
    にむかって 「 君だってやれば白井さんみたいにできるんじゃないの?」 などと
    軽く言ってしまったことがあり、言われた女性から反感をかったというわけです。

    私の場合は親が近くに住んでいて子どもを預かってくれるなど、たまたま幸運な
    環境条件が揃っていただけですが、他の女性から見れば、ありがたくない働き方
    のモデルを作ってしまったんだと思います。

ロズリン:単にがんばっているだけでは、理解が得られない辛さですね。

白井:海外赴任のチャンスが無かったことにしても、女性だという理由で何らかの配慮
    が働いた可能性はあったのかも知れません。

    このことに限らず、どうがんばっても同期の男性のほうに先を越される悔しさ、
    難しさは、他にもたくさん経験しました。

ロズリン:女性の誰もがのびのびと働ける環境づくりは、本当に難しいですね。






    インタビューは、まだまだ続きます。
    後編をお楽しみに!