一般社団法人 
 日本女子プロ将棋協会(LPSA) 

 女流棋士 船戸 陽子 さん 
 をお招きして、
 前編 ( 11/25アップ ) に引き続き
 おまたせしました! 後編 です。




あえて “ 苦手 ” を選ぶ道もある

ロズリン:
将棋もソムリエも…  となると、記憶力には自信がないと
       いけないですね。



船戸:記憶力はあると思います。
    試験は基本的に、暗記していないと答えられませんから。

    ですが、数字や計算はとにかく苦手なんですよ。



    確かに将棋は、計算や論理を司る左脳が優先するといいますし、
    棋士には数学が得意だったという人が少なくありません。

    将棋向いてないのかなもしかして。
 
 
ロズリン:LPSAのチラシやポスターなどのデザインを担当して
      いらっしゃると聞きました。 アートの方面にもご興味が?



 船戸:子どもの頃から、絵を描いたり
     本を読むのがとても好きでした。

     特に “ 色 ” について考えるのが
     好きで、それがカラーコーディ
     ネーターの勉強へとつながった
     んですね。

 ロズリン:学生のときの専攻は?
 


船戸:大学は経済学部でしたが、… 
    後から選択ミスだと気づきました、ただ、私は “ 苦手だから ” あえて
    飛び込む、ということをするたちなんです。

ロズリン:たいていは、得意分野か、もしくは楽な道を選びますが、それは
      珍しいですね。




船戸:学生の頃にはすでに棋士として活動していましたが、バブル崩壊後
    で日本社会がどん底に落ち込む一方、ネットの台頭でキャッシュレス
    社会が幕を開け、「 貨幣は無くなる 」 とまで言われた時代だったこと、
    またユーロ移行直前の、世界共通の通貨への興味などが後押しした
    んですね。

    無事に卒業しましたが、今でもその頃に苦労した夢を見ます。


美味しいビールも2杯目は …
 
ロズリン:でも、大学では役に立つことも学べたでしょう?



船戸:例えば、“ ダグラス・有沢理論 ” は、先進国の働く女性の年齢別
   人口が、グラフ上できれいなM字になるという現象を説いています。

   卒業後、就職した時点で第1のピークがあり、結婚や出産で退職
   する頃でいったん谷底に、育児が一段落すると第2のピークが
   作られる、という。

   今は共働きが当たり前で、多少古くなった部分があるかも知れませんが、
   自分が仕事でつらいときに、思い出したりします。

ロズリン:今の日本でも、そういう傾向はまだあると思いますよ。
 

船戸:
あとは、“ 限界効用の逓減 ( ていげん ) ”。 
    簡単に言うと、「 1杯目のビールは美味しい 」 というもの。

    2杯目以降はありがたみが減ってきて、さほど感動しなくなるでしょう。



ロズリン:なるほど、分かりやすくて面白いです。

船戸:確かにこれらは、大学に行かなかったら知らなかったことですよね。




 

“ 好きでなければ指せない将棋 ”
  とは
 
ロズリン:将棋の話題に戻ります。
      将棋は小さい頃から?
 

船戸:将棋は父の趣味で、自分が年をとったとき、娘と指せたらいいな
    と思う程度だったのが、だんだん 「 この子はもしかしたらいける
    かも 」 となり、以後は猛特訓の日々でした。

    実は、私はもともと将棋が好きではなく、むしろ絵を描いたり
    したかったので、小学校時代は父のスパルタ教育がイヤで
    仕方ありませんでした。



    大人ばかりの道場で、知らない人とプレーマッチするとか。
    だから、子どもらしい遊びは経験していないんです。
 

ロズリン:
お友だちと将棋を指したことは? お父様との対局なども?
 
船戸:多少、将棋のできる男の子もいましたが、その子より強くなって
    しまって。

    父は、自分の方が危うくなってからは指さなくなりました ( 笑 )。
    今はもっぱら囲碁の人です。


ロズリン:
それでも今は、プロとして立派にご活躍です。
      楽しいこともあるでしょう?
 


船戸:プロになりたいと思ったことはないんですが…

    立場上、義務感からやっているつもりでも、はたからは
     「 将棋がすごく好きでしょう? 」 とか 「 あなたのは、嫌でやってる人の
    将棋じゃないよ 」 などと言われます。

    好きだからこそ指せる将棋、というスタイルに見えるらしいんです。


  でも時には、勝負の瞬間に別のアドレナリン
  が出るのか、ランナーズ・ハイのような高揚
  した気分になることもありますね。

  楽しくなって、「 終わらなければいいのに 」
   と思うような。

  対局の直前は非常にナーバスになるもの
  ですが、ひとたび始まってしまえば、不思議
  と静かな高揚感に包まれるものなんです。


 

間違うところに愛がある
 
ロズリン:これからも、まだまだ新しくやりたいことがいっぱい?
 
船戸:今は、必要があってドイツ語を勉強中です。

    ソムリエとしては出来るだけ原語・原文を理解できることが大切なので。

    あとは、運動もしないと …
    でも、かつてジム通いにも熱中してしまい、危なかったことがあって ( 笑 )…

    ふと 「 私はいったい、何になりたいんだ !? 」 と ( 笑 )。
    何事もほどほどがいいんですよね。


ロズリン:
将棋の世界で活躍する女性は、今後もっと増えるでしょうか。



船戸:ぜひ、協会が主催する芝浦の教室にいらして下さい。

    当協会の「キッズスクール」では女の子のほうが多いんです。
    これは将棋の教室では珍しいことですがうれしいですね。

    大人向けの教室ではご主人に負けたくないからと、密かに通って “ 対策 ”
    をマスターされる奥様もいらっしゃいますし。
 
ロズリン:男性は、女性に負けたくないという人が多いようですね。

      先ごろは、棋士と対局したコンピュータが勝ったという出来事も話題に
      なりましたが。
 
船戸:基本的に機械は間違うことをしませんが、人はどんな名人であっても
    間違う可能性があります。

    だから人間同士の対局は面白いのであって、一度くらいプロが負けた
    からといって、将棋の魅力が減るわけではない。
    その点は、強調していいと思いますね。



<インタビューの感想>

日本女子プロ将棋協会は、ご存知の通りアパガードでカフェイベントや、
アマチュア団体戦を協賛しています。

彼女とは、そのご縁でお会いしたのですが、「 将棋とソムリエ? 」 と
お聞きして! あまりにもかけ離れた分野で興味深く、今回インタビュー
させていただきました。
 
船戸さんは様々なことにご興味をお持ちで、1つ始めてしまうとついつい
熱中して極めるまで努力を惜しまないといいます。

この姿勢は、ぜひ見習いたいですね。

お話しの中で、将棋もワインも 「 記憶力 」 がキーワードなのだと
納得しました。
 
将来は、お着物でワインをサービスするお店を持つことが夢と、目を
輝かせながら語る船戸さん。着物とワインは、私も大好きなので、
そんなお店の実現が今から楽しみです!
 
インタビュー当日は、お着物! 帯もステキでとってもお似合いでした。