インドと日本の職人達による手仕事なら
  ではの力強さ、温もり、豊かさを大切にした
   “ 布 ” や “ 衣 ” を創りだす

  テキスタイルデザイナー
  原口 良子さん を お招きしました。
 
 


デビュー当時からこれまでの作品の集大成ともいえる個展 
「 美しい布 インドの手仕事を染める 」 が、彼女のギャラリー
 Sind ( シンド ) で、2011年4月5日~10日まで開催されました。 

風にそよぎ、光を孕んだ作品は不思議な存在感を放ち、 
作者である彼女と共に素敵な物語を語ってくれました。 

インドと日本での作品づくり、国内外での個展、大学講師と多岐に
ご活躍されている彼女の世界を、どうぞお楽しみください。
 
 
 

 sind  WEBサイト URLhttp://members3.jcom.home.ne.jp/sind/



個性的な魅力の柿渋染め
 
ロズリン:素敵な作品ばかりですね! 

原 口 :今回は私の作品の最初から現在に至るまでの 「 レビュー個展 」 
      みたいなものです。 

      実は2009年12月にインドで、パートナーの和紙作家リチャード・ フレイビン
      とのコラボで行った個展が元となっています。 
      私は布、彼はディスプレーの方でサポートしてくれたんです。 

      20年前、柿渋染めでスタートしたものから最近の作品まで幅広く楽しんで
      いただけます。 


 

ロズリン: 「 柿渋 」 とは? 

原 口 
:日本の伝統的な染物です。 

ロズリン:柿渋染めに出会ったきっかけは? 

原 口 :テキスタイルデザイナーとして働いていた東レを退職後、
      デザイナーとして独立して、無印良品のファブリックアドバイザー を
      やらせていただいているときに、滋賀県の近江ちぢみで布団 カバー
      をつくる仕事を手がけていたんです。 

      そのときに、ご縁あって発注先の開発の仕事もお手伝いすることに
      なり、ある日、開発した布を柿渋で染めてみたらと一緒に仕事をして
      いた方から勧められたのが柿渋との初めての出会いでした。
 


ロズリン:デビュー当時は柿渋の色がメインだった? 

原 口 :最初の頃は柿渋に夢中でしたね ( 笑 ) 
      柿渋染めを中心に、その上に少し他の色を載せるという手法も
      やっていました。 

      柿渋にはタンニンが多く含まれているので染めた素材の質感を
      硬くするんです。 触ってみれば分かります。



   シルクの柔らかい風合いから麻のようなしっかりとした硬さに変化します。 

ロズリン:本当にシルクとは思えない硬さですね。 

原 口 :ですから衣服に柿渋染めが使われた文化はほとんどないんですよ。 
      着物を染めるのは色も美しく風合いもそのままに染まる、草木染が
      使われていました。 

      柿渋は文字通り渋柿を砕いて、発酵させたものを使うので銀杏より
      匂いが臭いんです。 
      防虫・防水効果があるので一般的には番傘や投網など生活用具に
      使われていました。

 

 
  ロズリン:染める工程も草木染めとは違う? 

  原 口 :違いますよ。
        草木染めはお湯で煮立ててエキスを
        取り出したところに布を入れて染める
        んですが、柿渋は浸けて干すだけ。
         簡単なんですよ。
 
                         
太陽に晒されているところに色がつき、布が重なっている部分にはあまり
色がつきません。 

全て独学で学んでいったので、最初は干し方によって柄が出来るという
ことを知らなくて、干す場所がないから寄せたり、畳んで小さくして干して
いたら偶然できたものなんです。


ロズリン:干し方で色の変化が出せるんですか。

原 口 :布をぎゅっと寄せて干すと、 “ 山 ” と “ 谷 ” が沢山できますよね。
      “ 山 ” の部分は太陽によく当たるので先に乾き、内側の “ 谷 ”の
      部分は乾きにくい。
 


     これは “ 毛細管現象 ” と言い、乾いているところに向かって水分が
     動く現象が起こります。 

     このとき柿渋の染料も一緒に移動するので、 “ 山 ” に色が集まり
     濃い色に染まるんです。 

     糸を使わないで絞りのような柄がつくれるのも柿渋の面白さです。
 
 
ご縁に導かれて作家の仕事に 

ロズリン:それからは作家になろうと?
 


原 口 :いいえ、作家になるつもりは全くなくて趣味でやっていくつもり
      だったんです。 

      翌年に玉川高島屋の展示会に新人作家としてたまたま参加する 
      ことになり、それが面白くてだんだん虜になってしまって。 ( 笑 ) 

      無印良品の仕事と並行して4、5年続けた後に、これ1本に絞りました。 

      その玉川高島屋の展示会の参加当初から、インドに飛んでいきました!!
 
 
ロズリン:インドを選んだのはどうして?
 


原 口 :どこを一番かというのは捉え方によって違うけれど、インドの
      テキスタイル力は素晴らしいですよ。 

      バリエーションの豊富さもあるし、機械じゃなく手仕事で量産する
      ことができる国はインドだけ。 

      一生かかっても回りきれないくらい、ビーズからクラフトから素晴
      らしい技術がインドにはあるんですよ。  
 
 
テキスタイルの知識を生かした作品づくり
 
 ロズリン:もともとは、テキスタイルデザイナーですね。 

原 口 :はい。 ファッションじゃなくて糸から布を開発する仕事をしていました。 

 
 この糸は何度で染まるかとか、糸を組み
 合わせてこっちは強く染まるけど、こっちは
 染まらないハズだとか、技術者の方と一緒
 に試行錯誤しながら生地をつくっていました。 

 自分のイメージする布をつくりたくて、
 いろいろ勉強もしました。





ロズリン: そのときに培われた知識も作品づくりに生きている? 

原 口 :ふつうの染色作家さんだったら、もっと染めの美しさを追求する
      ことに力を注ぐと思うんですが、私は材料から入るから、

      どんな糸を掛け合わせてどんな生地をつくるかというところに
      注目するんです。 

      東レにいなかったらこういう考え方で物をつくる発想はなかったと
      思います。
  
ロズリン:生地へのこだわりから始まるんですね。

 

原 口 :一番最近の作品ですが、縦糸を
      ブルーで横糸をイエローで織った
      柔らかい玉虫色の生地を使った
      ものです。 

      この生地に茶色や黄緑の染料を
      手染めでグラデーションをかける
      と色が立体的に表現されます。 

      さらに柿渋を軽くかけて玉虫色
      のギラつき感を抑え、落ち着いた
      色味に仕上げています。 

     よく見ると光の加減でブルーや
     イエローに見えますよ。

     糸がもともと持っている色の力が
     消されることなく発揮されているん
     です。



ロズリン:こういう色になるだろうと予想してつくるんですか? 

原 口 :いくつもの色が組み合わされるので、最初はぜんぜん違うものが
      できてびっくりすることもありました。 ( 笑 ) 

      今は多少、予想がつくけれど、難しい色はそんなに簡単にピタっ
      とはいかないことも多いですね。 

      なので、必ず色サンプルは取っておくようにしています。
 


     この手法は化学染料に、少し自然のものを合わせるとニュアンス
     がふっと落ち着いたものになるんですよ。 

     他では見られない色だと思います。
     私がいま一番夢中になっているのは、そこなんです。
 


        インタビュー前編はここまで。
        後編も、興味深い染色手法など伺います!お楽しみに。