インタビュー6人目にご登場いただくのは、サンギとの関係も深い
株式会社オーラルケア代表取締役社長 大竹 喜一 氏です。



「視点の移動」で歯科の常識を変えたい

“知ること”の大切さを伝える

ロズリン:オーラルケアさんは、専門家向けの予防歯科
      製品の輸入や開発・販売などを手がけていらっ
      しゃいます。

また、「アパガードリナメル」などの歯科専用製品を通じて、
私たちサンギのビジネスパートナーとしても心強い存在です。
            
                非常にユニークな社風だといつも感じますが、
                大竹社長ご自身の情熱とビジョンが反映されてい
                ると思います。

 大竹:当社は、新しいマーケットを創り上げるに当たって、まず教育・情報発信を重視して
     います。 固定概念はどうしても根深いため外しにくい。
   
     新しい市場を作り育てあげるたには “なぜそうするのか”を伝え、それがその後
     どう展開して文化となって定着していくのかというところまで落とし込む必要があ
     りますから。

 また間に人を介するほどエッセンスの部分が抜けていって
 しまうので、マーケティングに関しては基本的に営業や流通、
 代理店は通さず、我々が直接当たっています。
 
 大事なコンセプトはどうしても自分で直接伝えたいので。

 ロズリン:情報発信事業にも、非常に力を入れていらっしゃ
        いますね。
 

 大竹:セミナー主催のほか、DMや歯科医師向けのニュースレター、歯科衛生士向けの
     雑誌『タフトくらぶ』などを、社内で編集部を設け、企画・発行しています。

     この雑誌は、ご希望いただいた3万数千人の歯科衛生士に無料で配布している
     もので、歯科衛生士を応援する媒体として大変好評です。
     
     情報交換だけでなく、「あなた方は社会から必要とされている」という歯科衛生士の
     雇用価値や市場価値という重要なメッセージ発信の場にもなっていると思います。

  

 日本を飛び出して見えたこと

 ロズリン:20代の頃、ご自身の今の姿が明確に想像されましたか?

 大竹:私が20代の頃は、将来どうなるかなんて全く考えず、人生を放浪していましたね。

     いわゆる学生運動も末期という1970年代、当時の日本の閉塞感がどうにも息苦しく
     て、とにかく外に出たかった。 この空気は自分には合わないな、と本能的に感じた
     ので、海外に出て大学まで海外にしました。
     落第の心配もしたけれど、とてもエンジョイしました。自分本来のDNAを殺すことなく、
     最も多感な時期を海外で過ごしたことは、今につながっていると思います。

 ロズリン:主にどちらへ?
 
 大竹:アメリカの大学(ミシガン州立大学、ヒルスデイル大学)で学び、そしてスペインの
     マドリード大学にも留学し、欧米を往復する形になりました。
  
     その頃はまだ日本人が珍しかったこともあって、町のバール(小さな酒場)に行くと、
     しょっちゅういろんな人がコーヒーやワインをおごってくれるんです。入れ替わり立ち
     替わり飲まされて、しまいにヘロヘロになったりして。  
     要するに、ヨーロッパ人は “ いかに人生を楽しむか ” という視点で生活している
     ことを実感しました。

     海外での生活をとおし、彼らの生き方から “ 視点の移動 ” ということを学びました。
     例えば、「日本人ではこう考えるけど、○○人ならこう見るよね」といったような…。 
     
      多くの角度から見ることの良さは、物事に対して思い込みがなくなることです。
     そうすれば、常に客観的な判断ができるようになるでしょう。
        
 
 ロズリン:
それは非常に大切なことですね。

 大竹:ただ、同じ経験をしても、視点移動ができない人もいます。
     要は、多面的に物事をみることに興味を持てるかどうか、
     それを好きになれるかどうかです。

     自分はそれができたし、楽しかったから。 

 ロズリン:海外生活が気に入って、日本に帰りたくなくなった
                        のでは? そういう方は結構いらっしゃいますね。

 大竹:後ろ髪を引かれる思いはもちろんありましたが、実は帰国して、資本主義の顔をして
     社会主義原理で動いている日本という閉塞社会に風穴を開けたいとも考えていました。

     これからの日本は変化しなくてはダメだということが、外に出てみて良く分かったん
     です。 またその思いの強さは今も同じです。

 
 
 “予防”がもたらす大きな恩恵

 
ロズリン:その後の日本で、歯科学の世界を選んだのは
       なぜですか。

 大竹:30年前の当時、先進国の中で最も遅れているのが、
     歯に関する予防分野だったこと。
     そして今も多少進化したにせよ、他の先進国と比べる
     と大きく遅れている。

 日本がブランド商品が一番売れている一方で、先進国の中で日本人の歯は汚い(歯周病、
 虫歯などが未処置のまま放置されている)といわれていました。

 その頃は北欧では人口の9割、アメリカでは7割が定期的な歯のメンテナンス、ようするに
 歯の定期健診とクリーニングなどを受けていたのです。

 それに比べ、日本は3?4%という惨憺たる現状でした。
 これから免疫も低下してくる高齢者の数も著しく増えていくし、その80%が歯周病に罹患
 している。 
 これじゃ “ 臭い高齢化社会 ” を迎えるのでは! これは変えなくちゃ、と思い立った。


 ロズリン:今と違って、ハードルも多かったのでは。

 大竹:私の場合、そういう状況ではむしろ燃えます。しかし閉鎖的で新しいものがなかなか
     受け入れられないかつての歯科界においては、闘いの連続でしたね。

     まだ島国根性が残っていたというか、皆が同じ思考だったんです。

     当時は歯科医師と言えば、安定した生活が保証されていて、程度の差はあるけれど
     全員が勝ち組でした。

     ところが、14~15年前ごろからでしょうか、社会変化に敏感に対応できているかどうか
     で、歯科医師の間でも格差が明確になってきました。

 

 ロズリン:その場合、カギになっているのはどんなことですか。

 大竹:今、繁栄しているのは“予防”に力を入れているクリニックです。

     1987年に初めて訪ねたスウェーデンで予防の実験都市と呼ばれていたカールスタット
     で受けたアクセルソン教授の講義でした。
     彼の予防歯科臨床の研究結果には衝撃を受けました!
     
     それまでは、加齢と共に歯を失うのは当たり前と思われていましたが、その研究に
     よれば、ホームケアとプロフェッショナルケアで97.7%の確立で歯は守られ、生涯
     にわたって自分の歯で食べられることがが立証されていたのです。

    “歯は残せる”と分かって、「大変なことが起きている」と直感した私は、スウェーデンから
     予防の専門家や研究者を日本に招聘して、予防をテーマにしたセミナーを開催し続けま
     した。 厚生労働省にも働きかけ、日本の歯科医師会や歯科衛生士会にも働きかけた。
     それでも、動こうとしないんですよ。

 ロズリン:予防歯科への意識改革ができたかどうかが、その後の分かれ目になったと。

 大竹:そう。 歯科医院で予防システムを導入するというのは、即ち医院のビジネスモデル
     をリピートビジネスに転換するということです。

     定期的なメンテナンスで再来院を促すシステムは、顧客の長期的な維持につながり
     ますから。 

     加齢と共にニーズが増すだけでなく、たとえ自費でも、より良いケアを望む人は多い。
     ですから、メンテナンスをベースとしたビジネスモデルを提案したいという考えは、
     専門家のためにも国民のためにも、以前からずっと持っていました。

   インタビューは後編へと続きます。お楽しみに!