鎌倉在住
   ビーチコーミング案内人
   山田 海人 さん をお招きしての
   前編です。

              


ビーチコーミングという自然観察をしっていますか?
海の漂流物を海岸でひろい観察して、その物の種類や由来などを
調べたり想像するというもの。
そのビーチコーミングを鎌倉で長く行い、案内人として活動している
山田海人さんに今回はその楽しみを伺いました。

山田さんは、日本で初めての海底居住計画に参加したダイバーでもあり、
筋金入りの海の専門家なのです。


山田海人さんの鎌倉リポートhttp://kamakuratoday.com/suki/kaito/



鎌倉はビーチコーミングの名所

ロズリン:ビ-チコ-ミングという言葉は聞いたことがありますが、
      実はどういうものですか。

山 田 :海岸の漂着物を拾い、その物が何なのか、どんな由来があるのかなど、
      さまざまなことを考える大人の知的な遊びです。

      漂着物には海や陸の生物、椰子の実など自然のもの。ビン、陶器のかけら
      といった生活に関するものと、さまざまあります。

ロズリン:この鎌倉の海岸もいいですか?

   

山 田 :ここは特にいいですよ。
      通常は海を漂流しているものが砂浜に上がりますが、鎌倉はそれに加えて、
      鎌倉時代、江戸時代などの歴史的な遺物や、生活物などの堆積物もあがる
      からです。

      それは鎌倉の海岸が湾になっていて、奥が深く遠浅なおかげです。
      その地形のため、河から流れ出たものも海底にとどまり、長い時を経て
      またあがってくるんですね。 これにはすばらしいお宝が多いんです。

      たとえば鎌倉幕府で使っていた食器や、戦で使ったもの、当時の馬や牛の
      歯や骨。宋の時代の陶器のかけら。

      そういうものがたくさんあがるのは日本の中で鎌倉だけでしょう。
      それどころか、縄文時代のものと思われるものまで拾えるんです。
      だから一生懸命、鎌倉の海をPRしてるんですよ。

ロズリン:すばらしいですね。


山 田 :あとで実際にビーチコーミングを簡単にやってみたいですが、まずは
      今日持ってきた、お宝の一部をお見せしましょう。

 

      これは縄文時代のものと思われる土偶です。 縄文時代なら約1万年ほど
      前のものとなるでしょう。

ロズリン:すごい! でも、もし海岸で普通の人が見たら、わからないでしょう。
      最初から何か貴重なものだとわかりましたか?

山 田 :これを見つけたときは、何かオーラを感じたというか、遠くからでも砂浜で
      非常に大きく見えました。



      まず素焼きであることに注目し、人形のような形をしているので土偶だろうと。
      腰のあたりが大きいので、たぶん女性じゃないかと思われます。

      そしてこれは宋の時代の青磁の陶器のかけらです。




ロズリン:宋の時代ですか?

山 田 :刻印まで見えるので、これは窯元まで特定できるんです。

      12世紀のもの。青磁は釉薬を塗って焼くのですが、この頃は日本では
      釉薬を使う焼物はなかったんです。
  
      宋には技術があったんですね。
      このかけらでは内と外に釉薬が厚くぬってあるのが見えます。
      こういうかけらは、毎日のように拾えるんですよ。

 

 ロズリン:海の散歩の感覚が、まったく違ってきそうです。




山 田 :またこの素焼きのかけらは 「 かわらけ 」 というものです。

     

      鎌倉時代によく使われていた使い捨てのお皿やぐいのみのような
      ものですが、戦の前に武士がこの世の最後の酒になるかもと、お酒を飲み、
      容器を割って戦にのぞんだんですね。



江戸時代の照明のかけらを見て、当時の生活をしのぶ

ロズリン:それは何ですか?

山 田 :同じ素焼きですが、こちらは江戸時代の燈明皿のかけらです。

      当時の照明はキャンドル皿のようなものでした。

     このかけらにはへりがあるんですが、これは布などの灯芯を
     かけるところですね。

     芯に菜種油をひたして火をともしていたんです。

       
 
                           燈明皿の完全版

     欧米ではこの時代、家庭でも街でも照明にはクジラの油を
     使っていましたが、日本は環境にやさしい菜種油でした。
   
     このように当時の暮らしに思いを馳せたり、歴史をさぐっていく
     ことは、とても興味深いことなんです。
 
     では動物のものにいきましょう。これはイルカの脊椎骨です。
     ちょっと持ってみてください。
 

ロズリン:非常に軽いですね。

  

山 田 :
骨が軽いものは、海の生物なんです。
      陸上の動物は歩くので重みを支えるために骨も重くなるん
      ですね。 こういったイルカや鮫などの骨はよくあがります。
 
      あと化石の類もいっぱいありまして。これはカニの化石です。
      こういうものが拾えた時はうれしいんですよね。

   

ロズリン:
すぐにカニだとわかりましたか?
 
山 田 :こんなに小さいから最初はもしや、という感じでしたが、手に
      とってみたら 「 あっ、カニだ! 」 とすごくうれしかったです。

      状態からみて、数千年ぐらい前のもののようです。
      あとこれは牛の歯です。
       

ロズリン:
どうして牛だとわかるんですか?

山 田 :
牛は反芻するので、歯の接合部がデコボコなんです。
      こっちは馬の歯ですが、ちょっと違うでしょう?


         右が馬、左は牛の歯
 
ロズリン:ああそうですね。とがって、細長いです。
      断面が顔のようにみえますね ( 笑 )。

     
                         馬の歯(上から見て)ちょっと
                           顔に見えませんか?

山 田 :こういう馬の歯が、鎌倉では
      多い日は10本以上拾える
      んです。
      
     鎌倉時代、戦で亡くなった馬は
     浜などに埋められたんですね。

     それが沖に流れて堆積して、
     時を経て流れ着く。


ロズリン:
牛はなぜ多いんですか? 当時は牛肉は食べないですよね?
 
山 田 :牛は都である鎌倉に、いろいろな物を運んだりする当時の
      トラックのような存在だったからでしょう。
 
      それに対して馬は、黒塗りのベンツというところでしょう。
 
 ロズリン:なるほどね。


山 田 :馬の人形もありますが、このように形が変わって
      いるんですね。
      江戸時代ぐらいのものじゃないかと思うんです。



     あと、私が好きなものはガラスビンなんです。色々あります。
 
     たとえばこれは、 CAWS INK と書いてあるんですが、19世紀
     にアメリカの大統領が使っていたインクです。
     カラスのように黒いインクという名前らしい。



ロズリン:え? そうするとアメリカの船から落ちたんですかね。
 
山 田 :ここは遠浅なので、外海の船からの漂着物はほとんど
      ないんです。

      そして当時はアメリカに渡る庶民はほとんどいない。
      むしろ誰か、鎌倉の文豪に小説の依頼をされたものが、いい
      作品を書いてほしいからと、アメリカから何らかの形で手に
      いれたインクもプレゼントしたとか。

      そんなことを考えると、文豪が書いた作品まで見えてくるような
      気がするんです。

 
ロズリン:すごい想像力ですね。
      もうひとつ、キラキラしているビンは何ですか。



山 田 :
これは 「 銀化現象 」 というのをおこしているんです。
 
      長年海の底にビンが眠っていた時に、海のヘドロや土が中に
      入って、ヘドロの中の有機物が反応をおこしてこうなるのです。 
      だから銀化ビンと呼んでいるのです。
 
       こうやって、キラキラ光るのを見つけた時は、本当にうれしい
      ものです。

       

ロズリン:
まさに海の恵みですね。
 
 
山 田 :そして明治時代の目薬のビンがあります。

      「 大学目薬 」 と書いてあって、メーカーは参天堂と見える。
      こういうビンはとても高価なもので、今の価値でいうと当時は
      1本、ビンだけで千円ぐらいしたと思いますよ。

 
ロズリン:ビン自体がすごく貴重なものだったんですね。
 

山 田 :
あと、おもしろいのは崎陽軒のシューマイのしょうゆさしの
      瀬戸物 「 ひょうちゃん 」。

      時代時代でいろいろなデザインがあって、ファンが多いん
      ですが、たとえばこれは昭和22年から30年までのもの
      です。

 
ロズリン:これだけ種類があるんですか。かわいいですね。
 

山 田 :では、このへんで実際にビーチコーミングをやってみましょう。
      波打ち際から、砂が濡れているところまでが探す範囲です。


      コツは無心で探すこと。

      「 これを拾いたい 」 と思って欲がでると、不思議といいものが
      拾えないんです。
 
ロズリン:わかりました ( 笑 )。 ではいってみましょう。


 
材木座海岸をビーチコーミング中  見つけたものは山田さんがチェック


   海岸には、他にも探す人たちが


 
   で、おどろくほど見つかりました!

   右がひとでの化石、素焼きのかけらは 「 かわらけ 」。
   中央は青磁のかけら。
   あとは年代もののビンのふたなど。 大事にします!
 
   実際にビーチコーミングをしてみると、すっかり夢中になり、
   気がついたら夕暮れ時に。

       
     
       


  後編では、深海での潜水経験のお話しなどお聞きします。
  お楽しみに!