特定非営利活動法人 おさかなポストの会
  代表 山崎 充哲 さん
  お迎えしての後編です





川に落ちた時にあわてないように、子どもたちに自分の身を守る教育を
 
ロズリン:山崎さんはもともとどういった勉強をされてきたのですか?
 
山 崎 :当初は獣医になりたくて獣医学部に入りましたが、実験でどうしても
      イヌが殺せなくて挫折しまして。

      釣りが好きで、魚や水の生き物の研究がしたかったので水産学科に
      転科したんです。
 

ロズリン:就職も水産関係だったのですか?

山 崎 :最初はつり具メーカーです。
      つりが大好きだったので入ったんですが、入ったら逆に行く暇がなくなり、
      やめちゃったんです(笑)。



      それで何で飯を食おうと思った時に、魚の環境コンサルタントとして、
      ほ乳類や昆虫なども全部込みでやることにしました。

      そういった小動物が生きていく環境をどう守っていくかを考える仕事で、
      バブルの頃までは順調でしたよ。
 
      自治体がデベロッパーに環境アセスメントの仕事をどんどん発注していた
      ので、僕たちはその末端で現場の仕事をたくさんして、楽しかった。
      当時稼がせてもらったから、その後なんとか仕事を続けています。
 

ロズリン:おさかなポストのほかにも、川や魚に関するボランティアを
      いろいろされてますね。
 
山 崎 :そうですね。
      川で子どもが溺れないように、自分で身を守る方法を教えたり、魚やカメを
      実際に見せる移動教室や、多摩川のタマゾン川化、環境問題、動物を飼う
      モラル、いろいろな生き物の話を紙芝居などで作って教えたりしています。


ロズリン:
そういった活動はいつからされているんですか?



山 崎 :きっかけは、娘ができて川に遊びに連れていったことですね。
 
      最初は娘の友だちも一緒にと頼まれ、その人数が増え、やがてクラス全員
      となり、学校行事として頼まれるようになると広がりが出てきたんです。
 
      多摩川は川の規模の割に事故が多い。
      それは近くに住民が多く、遊ぶ子どもも多いからなんですね。
      もし事故があって子どもが亡くなるようなことがあると、子どもは川で
      遊んではいけないということになる。
      それは悲しいことなので、事故にあわないように水辺の安全を教えています。
 

ロズリン:たとえばどんな風に教えるのですか?
 
山 崎 :まず着衣水泳ですね。
      学校のプールと実際に川にいくのと両方あるんですが、ライフジャケットを
      必ず着せて、学校のプールだとまず、うちの若い衆が子どもを洋服のまま、
      不意討ちでプールに放り込んじゃいます。


 
         洋服を着たままプールに浮かぶ子どもたち
 
ロズリン:え~(笑)。
 
山 崎 :日本では着衣水泳を教えませんが、川に落ちる時は靴もはいているし、
      洋服も着ている状態なので、まずその状態で水に落ちた時にあわてない
      方法を教えるんです。
 
      最初はびびってる子どもたちも、なれてくるとおもしろくなってきます。
 
      とにかく、落ちてもあわてず騒ぐな!と。
      大きく息をすった状態だと人間の体は浮くようにできています。
      だから落ちた子は絶対に叫ばずに、空気を逃さずにそのまま黙って浮いていて、
      魚になったつもりで流れていなさいと。



     その代わり、一緒にいたお友達は 「 助けて 」 と叫び、大人たちに助けを
     求めなさいと教えます。

     多摩川は散策に来ている大人は多いし、大人は子どもの味方だから
     必ず助けてくれるとも。
 
ロズリン:なるほど。いい方法です。





山 崎 :またこの地域の学校は、こちらの働きかけでライフジャケットを
      揃えてくれているところも増えました。

             授業に使用するライフジャケット


     川で遊ぶ時は、ライフジャケットをつけていれば、落ちても浮きますから、
     基本、ライフジャケットを着ていく体制をとっています。
 
     また川に遊びにいく時の注意としては、絶対に一人でいってはいけない
     という話もします。
     でないと落ちた時に助けを呼ぶ人がいませんから。

     そして濁った川も深さがよめないからだめです。
 
     そういった水辺の安全とともに、外来種で崩れた多摩川の生態系の
     話などもして、動物を飼う時の注意事項なども話します。
     
     カメは、おじいさんになっても飼うんだぞ!とか。
 
ロズリン:それは必要なことですよね。知らないで買ったら大変ですもの。
 
 


多摩川は故郷の原風景。大切にしたい。
 
山 崎 :ただね、最近困っているのが、近年クラスにも外国人の生徒がいるので、
      それを外来種!と呼ぶ子たちが出てきていることなんですよ。
 
ロズリン:え~。私も夫から外来種といわれてしまいそうです(笑)。
山 崎 :それを見つけたらちゃんと教えます。

      外来種というのは自分の意志できたものではなく、人間が勝手に
      ばらまいたもの。
      自分の意志でここにきた人はお客さんなんだから、仲良くしないと
      いけないんだぞと。
      きちんと話せば子どもはわかってくれます。
      命の大切さについてもそう。
      知った後にどうすべきかが問題なんです。




ロズリン:たとえば?
 
山 崎 :もし飼っている金魚が死んでしまったら、ゴミ箱に捨ててはいけない。
      そういう時は花壇のすみに埋めてあげて、そこに種をまこうと。
 
      すると金魚を栄養にして、種は花を咲かせるから。
      命のリレーで次につながっていくことを教えます。
      これは同時に慰めにもなりますからね。
 
      また、たとえば給食に出てくる豚肉。
      君たちに食べられるために、豚は命を落としたと説明し、 「 だからきちんと
      食べないといけない。残すと命がごみになってしまう。命をごみにすること
      は許されないことだ 」 と話します。
 
      僕の話を聞いた子どもたちは給食を残さなくなるので、その学校は残飯
      がほとんどなくなるそうです。
 

ロズリン:
そういった心がけが子どもの頃からできるのは、すばらしいことですね。
      大人もできることはたくさんあるんですけど。 

山 崎 :そうなんです。
      生き物を捨てないことはもちろん、多摩川のタマゾン化を押さえるには
      水温をあげないこと。

      これは家庭の水を排水する時に温度を下げてから流せばいい。
      お風呂は一晩あけてから流せば冷めているし、できたらその水を洗濯に
      使ってほしい。
 
ロズリン:そういった設備は家庭にあるんですか?
 
山 崎 :専用ホースは安く売ってますし、バケツで洗濯機に水を運べばすむことです。

      でも最近は洗剤に香りがついているものが流行しているので、
      ちょっと困りますね。
      その匂いは下水処理では抜けないから、川の水が匂ってしまうんです。

ロズリン:
流行のものを使うのも考えものですね。
      山崎さんが活動されたこの10年間、いろいろ変化があったでしょう。



山 崎 :そうですね。
      知名度があがったおかげか、うれしいことにおさかなポストを中心とした周囲に、
      外来種の魚がほとんどいなくなったんです。
      勝手に捨てる人がいなくなったかも。
 
      周囲の500メートルぐらいの流域ですけどね。
      このことで、活動がもっと広がっていくといいと思っています。
 
      金銭的にはきつくても、今後も水辺のパトロールや安全、おさかなポストの
      ボランティアはもっとがんばりますよ。
 

ロズリン:そこまで多摩川のために頑張れる理由は何ですか?
 
山 崎 :それは多摩川が自分の原風景だからです。

      昭和30年代、僕が子どもの頃、おやじと一緒につりに出かけ、おふくろの
      作ってくれたお弁当を川辺で食べる。
 
      夕方になるとおふくろが迎えにきて、3人で手をつないで家に帰るという風景が、
      心に常にあります。
 
      また僕の場合は、子育ての場所も多摩川だったから。
      そういう意味で多摩川は僕の人生で大きな位置を占めるし、自分が育ち、
      子どもを育てた故郷の川です。
 
ロズリン:なるほど。故郷の川への思いが強いんですね。
 
山 崎 :今の子どもたちが大人になり、自分のふるさとの川を考えた時、やっぱり
      多摩川を思い出すと思うんです。

      その時に汚い川になっていたら悲しいじゃないですか。



      僕自身、ごみの多さに驚き、ごみ拾いから多摩川での活動を始めました。
      子どもたちにも、大事に使わないとあとでしっぺ返しをくらうよ、といつも
      言っています。
 

ロズリン:もしも今何かもらえる!となったら、何がほしいですか?
 
山 崎 :たくさんの子どもたちが、お魚ポストにきてほしいです。
      そして生態系や命のことを学び、魚や動物たちに対してやさしい気持ちに
      なってほしいですね。
 
ロズリン:素敵です。
      そのためにも、山崎さん、これからもがんばってくださいね。


      



  <インタビュー感想>
 
   私は動物が大好きで、捨てられた猫やノラ猫が生んでしまった子猫たちを引き
   取っては、よく里親さがしをしてきました。
   犬も3匹飼っていましたが、一時期は猫だけで10数匹以上飼っていたことも
   あったくらい。
   毎日の食事はもちろん、病院で去勢したり病気の治療をしたりと、一度生き物を
   引き取れば、その責任と共に経済的にも負担は大きい。
   水の生物ではなおさら、お世話が大変だろうと想像できます。
 
   山崎さんはそんな困難も乗り越え、世界初!お魚や亀を引き取る施設
   「おさかなポスト」を運営しています。
 
   多摩川に限らず、日本の川は外来種が増え続けアマゾン化しているという事実は
   衝撃的でした。また世界の川でも同じような現象が起こっていることにも驚きました。
 
   自分が育ってきた多摩川の原風景を守りたいという気持ちと共に、命の大切さや、
   川や海で安全に遊ぶすべを子どもたちに伝え、自然に触れ、自然を守る心を育て
   ていければと語る山崎さん。
 
   今一番欲しいものは、話しを聞くたくさんの子どもたちだそう。
   山崎さんの授業を受けた子どもたちが増えれば、小さな命の尊さを知ることで
   いじめも無くなり、自然環境にも変化が起こると信じているからです。
 
   私たちが下水に流す水の温度が、多摩川をタマゾン化しているという事実を知って
   しまった以上は、私も含めて一人一人が自身の生活を考え直し、行動を変えなけ
   ればならないですね!