有限会社ビッグアート
  代表取締役
  奥村 昇 さん をお招きしての前編です。





サンギ中央研究所が在る埼玉県春日部駅東口地区の商店街には、
シャッターに旧日光街道・粕壁宿の面影を生かした浮世絵風の絵が
描かれた、「 シャッターアート 」 がいくつも点在します。

これを手掛けるのが有限会社ビッグアートです。
 
「 市民が集い、歩きたくなる街 」 を目指して東口商店連合会が景観再生
プロジェクトをスタートさせ、その取り組みの一環として公共トイレやお店
のシャッターに、アート画が描かれています。          

その数は増え続け、現在では31件のシャッターアートが街を飾り
「 街角歴史絵巻 」 として市民はもちろん、街歩きを楽しむ観光客からも
注目されています。
                                                                                                                               


春日部のテーマは歴史絵巻
 
ロズリン:駅から研究所までの道にも、いくつかシャッターアートがあり、
      いつも楽しく拝見しています。

      私が一番最初に見て、とても気に入ったのは、箪笥屋さんのアートです。
      ああいうレトロな雰囲気、大好き!


  
     山田桐箪笥製作所のシャッター
   天明2年 ( 1782年 ) に指物師の山田長松が創業した老舗。
   江戸時代の箪笥職人の作業風景と200年も前から伝わる
   指物道具を描く




      かぶや化粧品店
   一般化粧品はもちろん、演劇・舞台用のメイク化粧品も扱うお店。
   鹿鳴館時代の社交場を彷彿とさせる貴婦人が描かれました



 
      寿タバコセンター             春日部消防団第分団
    大正時代から続くタバコ店。         江戸時代の粋な町火消の浮世絵で表現
    江戸時代の役者絵で表現




        公園橋公衆トイレ
      古利根川公園のたもとにある蔵造り風のトイレ
      かつて近くに船着場があり、江戸との間に当時の舟運が盛んだった
      様子が描かれています。




        靴のくわばら
      明治時代から靴職人として創業した靴店。
      編み上げブーツをはいた大正時代の女学生を描き、
      当時のファッションの最先端を表現

 
奥 村 :ありがとうございます。
      春日部は日光街道の宿場町として栄えた町なので、その雰囲気を出したいと、
      すべて歴史絵巻をテーマに描いています。
 
 

エンジニア演劇小売業壁画アートの世界へ!
 
ロズリン:すばらしい作品ばかりですね。
       もともと春日部ご出身ですか?




奥 村 :いいえ。出身は九州です。
      こちらには25、6年前に引っ越してきました。
 

ロズリン:もともとは芸術家でしたか?
 
奥 村 :大学ではロケット工学です。
 
ロズリン:すごい! それがなぜ、壁画の道に?







奥 村 : 私が学生だった当時、工学部に入らなければ就職がないと言われており、
       たまたま数学や物理が得意だったので、工学部に入りました。
       が、どうも合わないな、と。

       そして映画や演劇の世界に入っちゃったんですね。演出をやっていました。
       どちらかというとクリエイティブな、自由に考えたりものを作ったりするほうが
       合っていて、大学時代から音楽事務所みたいのを始めたり、自由にやって
       いたんです。

ロズリン:大学のあとはすぐに就職を?
 
奥 村 :いいえ。サラリーマンに向いてなかったのがわかっていたので、大手企業
      に入ることはまったく考えませんでした。

      27才くらいまでリアカーをひいて旅行したり、風来坊みたいに全国をあちこち
      回りました。おかげで全国に友達がいっぱいできました。




     自分で劇団を持ったりしましたが、どうも好きな道は職業になりそうもない。
     それで普通の小売業に就職したんです。
     小売業なんて全然興味なかったんですけど、就職難でもう選ぶ余地がなくて。
 

ロズリン:最初の就職になりますね。サラリーマンはどうでしたか?




奥 村 :おもしろかったですよ。そこの会社は、私のやり方に完全にまかせて
      くれたので、その点はやりがいがありました。

      1年目には店長になり、結果的には営業部長にまでなりました。
      36才の時に、まったく違うことをゼロから始めるには、今しかないなと
      思って、ちょうど10年目だったし、思い切って辞めたんです。
 
      何をやるのかも決めてなくて、しかも家を買って3カ月、子どもも産まれた
      ばかりだったんですが ( 笑い )。

      それからいろいろあって、結局自分のビジュアルマーチャンダイジングの
      会社を作って、いまは壁画によって春日部の街を助けるという仕事に誇り
      をもって取り組んでいます。
 
 

絵の完成度にはとことんこだわる
 
ロズリン:壁画アートを描くのって、むずかしいんでしょうね。
      スタッフは、みなさん美大の出身者ですか。
 
奥 村 :ええ。でも、いまは美大出でも、手描きができる人が少なくなっていて。
      美大でも手描きの授業がないらしいんです。 
 
      なぜなら会社でもどんどんデジタル化して、手描きの仕事があまり
      ないんですよね。



      時代の流れで一時的にこうしてデジタル化していっても、アナログでしか
      できないこともあるので、また揺り戻しがくるんじゃないかと思っています。
 

ロズリン:手描きは、あたたかさがありますね。
 
奥 村 :手描きだと、その人自身が表現されてしまうんです。
      描いている人が元気じゃないと、絵も元気じゃない。

      心が曇っていないときって、すごくいい絵が描ける。
      自分の中で迷いがあったりすると、それが絵にも表れる。


  取材当日、製作中の現場を訪れる     現場で進捗を確認する奥村さん


  凹凸のあるシャッターは難しそう


      デジタルと違ってごまかしがきかないのが、むずかしいところであり、
      いいところですね。

      ですから描き手に対しても、コンディションについてはうるさくいいます。
      朝から元気がないと帰りなさいといいます。
      作品に出てしまいますので。


   早川畳店のシャッターデザイン画     完成したシャッター ( 後日撮影 )


  現在の畳作りを見学させていただきました。



ロズリン:なるほど。完璧を求めていらっしゃるんですね。
 
奥 村 :絵柄にも実際に春日部にあったものを取り込んだりしながら、
      かなりこだわっています。

      昔の資料を調べて、薬屋さんなら薬屋さんの歴史を再現していきます。
      江戸時代の姿って、我々、想像だけじゃ描けませんからね。


   1Fのアトリエ内部。 立体物やレリーフなど
   ここである程度制作し、現地へ運ぶこともある。



    道具類



  インタビューは、後編へと続きます。
  お楽しみに