今回は 東京シンフォニア の
   「 指揮者セミナー 」 で学ぶ
  指揮者候補生のお二人をお招きしての
  後編です。







指揮者には音楽の技術はもちろん、表情の豊かさや人間力が必要?!
 
ロズリン:お二人とも、指揮の活動はもうなさっているの?
 
阪 本 :僕は自分のオーケストラではホルンですが、アマチュアのオケで
      指揮者として振っています。
 
      11月初旬に 「 運命 」 を振るのと、12月には奄美大島の日本復帰60周年のイベントで
      「 第九 」 を振らせていただきます。


        
          アマチュアの楽団で指揮する阪本さん  


        
 

小 川 :私は、指揮はまだロバート先生に教えていただいている段階です。

      でもマンツーマンでリハーサルから本番までの流れを体験し、一連の中での
      指揮者の目線というのを経験させていただき、すごく貴重な経験をさせていた
      だいていると思います。


ロズリン:
オーケストラの前に立って指揮するのは緊張するでしょうね。
      どの瞬間が一番緊張しますか?
 

阪 本 :最初の振り下ろしですかね。
      そこにみなを集中させないといけませんから。
 
小 川 :私はまだ入口にも立てていませんが、緊張もすごく楽しいです。
 
 
ロズリン:ロバートからは実際にどんなことを教えてもらうのですか?

 


小 川 :
ロバート先生はこまかい振り方については言いませんが、指揮者とは何か、とか、
      何を指揮するのかという本質的なことを教えていただいていると感じますね。
 
      作曲など自分の感性をただ形にするのとは違い、指揮者はいろんな演奏者の個性
      を統合して一つの楽曲をお客さんに届ける。

      それは技術もですが、人間力がとてもいるお仕事だと思います。

     


ロズリン:指揮者には自由がありますよね。
      自分のコントロールというか、今日はこういう風にしようと、自分の解釈を
      楽曲にできる。
 
小 川 :それは確かにおもしろいんですよ。
      ロバート先生は、いきなり現場にぽんと放りこんで、すごく自由にさせてくれるんです。
      でも私は、何を指揮するのか?ということに対し、どう勉強していいかわからないこと
      がありました。
 
      でも先生が、ミュージシャンイズミュージックを指揮するんだよ、というのが
      すごくわかりやすかった。

      何を表現するかということも、スコアを見てどう表現するか、指揮者の 「 インナー
      フィーリング 」 だと教えていただきました。
 
阪 本 :プロのオーケストラのリハーサルをいきなり振らせていただき、またゲネプロ
       ( 本番と同じ条件で行う通し稽古 ) でいきなりと、なかなか特殊な環境で
      教えていただいていると思います。
 
 

ロズリン:
指揮者はしゃべることなしに、合図や表情で演奏者たちに意志を伝える。
      それはすごいことだと思うのですが、そのあたりはどうですか?

      時々演奏者は見ていないような気がします。

 




阪 本 :指揮者は適切なタイミングで合図を出し、演奏者たちはそれを理解するように
      なっています。

      指揮を見る側の話をすると、実は常に指揮を見ているわけではないんです。
      振り出しの部分、フレーズの始まりや終わりなど、注視して見る部分はそう多くはない。

      でも指揮者が通常と違う動きをし出したら、何かが起こると、みなが常にアンテナを
      はっています。

 

      ですから指揮者が普段と違った動きをした時には、みな絶対に反応できるんです。
 
 
ロズリン:おもしろいですね。それにロバートを見ていると、とても表情が豊かです。

      日本語はうまくしゃべれないかもしれませんが、きちんと伝わっているのが
      すごいと思うんです。

阪 本 :そうですね。指揮者になると、表情も豊かになりますよ。目もとても大事です。

      70~80人のメンバーに対し、ある部分の人たちの方向を見ては 「 よろしくね! 」 とか
      「 しっかりやれよ! 」 みたいな視線を投げかけたりして。

      日本人同士だとつい説明してしまいますが、外国人の指揮者は言葉では簡潔な比喩
      のみで、あとはイメージがこう、こういう音が欲しいなど、表情や体を使ってニュアンス
      で伝えます。
 

ロズリン:なるほど。
 
      ロバートは結構いたずら好きで、以前ディナーコンサートの時に、本番中に
      僕は振れないと急に舞台を下りて、お料理を食べていた若手の指揮者にいきなり
       「 たのむよ 」 、という演出がありました。

      お二人も気をつけたほうがいいですよ ( 笑 )。
 
 
小 川 :いや、それは私にはやらないとおっしゃってました ( 笑 )。

   

ロズリン:みんなをその気にさせ、個々の力を一つの大きなエネルギーにまとめるという
      指揮者の仕事にはあこがれを感じます。
 
 
 
 
これからの道
 
ロズリン:お二人とも、今後はどんな風に活動を展開したいですか?

  


阪 本 :僕は今まで現場で培ってきたことを活かし、プロの指揮者として
      ちゃんと振れる力量を持って、全国のアマチュアや市民オケなどと関わり、
      音楽の底上げをしていきたいと思います。
 
      あと20年ぐらい、そういう形で関わっていけたらと思っています。
      その第1歩が、さきほど申し上げた年末の奄美大島での第九です。

 


小 川 :私は、ロバート先生が大好きなので、今のポジションにしばらくいたいと思っています。
 
      オーケストラの全員がソリストという先生の考えや曲の選び方も大好きなので、
      とにかくロバート先生から、晶子はもう自立しなさいと言われるまで、今のままで勉強
      していたいです。
 
 
 
 ロズリン:一般の人は、リラックス方法が音楽だったりしますが、
       お二人は何でリラックスしてますか?
 
阪 本 :お風呂ですね。30分ぐらいつかっています。
 
小 川 :私はきのうも、出雲大社に行っていたんですが、先日は伊勢神宮にも出かけたり。
      神社仏閣巡りが好きですね。





ロズリン:二人ともいいリラックス方法ですね。 若い音楽家へのアドバイスはありますか?
 
阪 本 :音楽だけじゃなくて、ほかの芸術にも興味を持ってほしい。
      僕自身、美術館巡りなどもよくします。
 
ロズリン:そうすると、自分の音楽が豊かになりそうですね。
 
阪 本 :そうですね。
      僕の中学校の書道の先生が、書道は筆を下ろして書き始めたら最後までいくしかない
      とおっしゃったのを聞いて、音楽と呼吸やタイミングも全て似ているなぁと。

      芸術全般がみなつながっていると感じました。
 


ロズリン:
音楽は奥が深いですね。
      同じ曲を何度も演奏したり、指揮をすることで別の目で見ると、毎回新しい発見が
      あるんでしょうね。
 
 
阪 本 :あります。
      演奏者としても新しい音が聞こえてきたり、こんなこと作曲家の方は書いていたんだ
      などわかったり、それはすごくおもしろいです。




小 川 :自分の曲を東京シンフォニアの方に演奏していただいた時、みなさんすごく
      お上手なので、指揮をしながらも 「 わ~きれい 」 と、私はついお客さんになって
      しまうほど、自分の曲でも発見があります。
 
 

ロズリン:
最後に指揮者の醍醐味って、どこにあると思いますか?
 
小 川 :最初にスコアの楽譜をいただいた時に、音を出さずに静かな環境で、ずっとスコア
      だけを見つめて音を想像するんです。

      そうして頭の中で表現していた音楽を、リハーサルの時に初めて聞くんですね。
 
      それが自分の思い描いた通りになった時、あるいはシンフォニアの方たちが
      自分の感性で演奏してくださったのが、自分の想像よりよかったりした時ですね。



      その場合 「 うわぁきれい、そっちの方がいい! 」 と、私はまだ全然リーダーとしては
      機能してないんですけど ( 笑 )。
 

阪 本 :僕は、自分の指揮でみんなの息が合って、想像しなかったようなエネルギーが
      生まれた時ですね。

      みんなをその気にさせるのが指揮者の仕事ですので、みんながよかったと思えるように
      指揮をしたい。
 

ロズリン:それは、前にロバートも言っていました。
      指揮者はビジネスマネージャーみたいなものだと。

      いろんな部署の人たちが、それぞれの居場所で能力をいかせる環境を作ることだと
      いってました。



      私も会社でそういう役割です。
      研究所でどうすればメンバーが同じ方向を向いていくかを考えるのは、
      最初は難しかったですが、力を尽くすと、だんだん全体にエネルギーがわいてくる
      のを感じます。

      目標に向かってみんなの力が合わさっているようで、そういう時、指揮者ってこんな
      感じかな?と思います。
 

小 川 :一緒ですね。
 
ロズリン:じゃ、私も企業内の指揮者としてこれからも頑張ります ( 笑 ) 。

      お二人も、これからもぜひ音楽を楽しみ、指揮者としてがんばってくださいね。






  <インタビュー感想> 
 
   アパガードでスポンサーを務める「東京シンフォニア」のメンバーには、これまで年に1回は、
   どなたかにインタビューしています。
   今までロバート・ライカー以外は、当然ながら全て演奏者の方でした。
 
   バイオリン、コントラバス、チェロ。それぞれの弦楽器の特徴や演奏者の思いを改めて
   理解すると、コンサートで楽曲に向き合う際にも、一つ一つの楽器が奏でる音の響きを、
   より深く感じとることができるようになった気がします。
 
   まだ読んでいない方は、過去のインタビューをぜひチェックしてくださいね。
 
   ロバートが新たに始めた 「 指揮者セミナー 」。
   後進を育てるため、プロの指揮者や指揮者を目指す方々を受け入れています。

   今回は初のお二人同時のインタビューでしたが、現在このセミナーを受けている指揮者
   候補生は、実は3名いらっしゃるんです。
 
   今回お話しをうかがったのは阪本さん、小川さん。
   お二人の音楽との出合い、指揮者を目指すきっかけはまったく違いますがとても興味深い
   お話しでしたね。
 
   これまでの経歴、 「 指揮 」 に対するアプローチも異なるお二人ですが、音楽を心から愛し、
   また楽しんでいることが伝わってきて、私も大変刺激を受けました。
 
   今回、出席できなかった、もう一人の候補生は横山照久さん。
 
   横山さんは、音楽はもともと好きだったようですが、自身の楽しみとしてピアノで簡単な曲を
   作ったり、歌を作ってギターで弾き語りをしたりと、趣味のレベル。
   プロを目指そうと思ったことはこれまでなかったそうです。
 
   たまたま東京シンフォニアのバイオリン奏者として活動されている妹さんのコンサートを
   聴いた際、ライカー氏に指揮がすばらしかったという感想を伝えたことがきっかけとなり、
   このセミナー受講を勧められたそう。
 
   3人目の生徒さんも、また面白いエピソードですね。
 
 
   音楽は同じ曲であっても、聴く度に新たな発見がある!
 
   音楽を愛し、心から楽しむ気持ちがあれば、あなたにも指揮者や演奏者への可能性が
   あるかもしれませんよ。