食事療法士
 辻野 将之 さん
   をお迎えしての、後編です。



気が巡る食事の仕方とは?

ロズリン:辻野さんが推奨する食養生では、お米は結構な量を食べるんですね。

でも最近は、炭水化物を抜くダイエット法などが流行しています。
お米をたくさん食べてやせるというのは、正直びっくりです。

辻 野 :
カロリーだけ見ていたら、そうかもしれません。
確かに炭水化物をとらなければやせますが、それはあたりまえだし、
どちらかというとやつれますよね。
そのやせ方だと気が巡らないので、冷え性になったり、むくんだりする。

僕の食養生の一番大事なことは、体に気がきちんと巡ること。
気がきちんと巡る食べ方や生活をすれば、体はあるべき姿になる。
太っている人はやせるし、やせすぎている人はちゃんと肉がつきますし、
健康的な体になるんです。


ロズリン:
その「気」というのは何ですか?



辻 野 :
そうですね。英語に訳したら「エナジー」になるのかな? 

正確にはそうじゃないかもしれませんが。「精」という表現もあります。
生きるうえでなくてはならないものです。

自然界でいうと、空気みたいなもの。
見えないけどそこに存在していますよね。人間の体の体温が一定なのは
「気」が巡っているからです。
死者は温度が下がれば体温も下がりますが、生きていると体温は36度
前後に保たれます。
東洋医学では、「気」「血」「水」が体を巡っているという考えですが、
気が巡っていなければ、血液も水分(体液)も巡りが悪くなり、滞って
体調が悪くなる。


気の状態は、目の輝きや顔色や声のはりなど、いろいろなところに出て
きますから、体の状態を観察すると一通りわかります。

私の行なっているのは、その人の気や体の状態、生活習慣などを聞いて、
気が巡るようにその方のリズムにあった食事や生活習慣の処方をすることです。


体に自然な食事

ロズリン:なるほど。ではその気が巡る食べ方は?



辻 野 :
日本人は米を主食にした食生活を伝統的に行なってきて、
それにのっとって食事をすることで、一番気が巡る体になってきます。

ロズリンさんはオーストラリア出身なので小麦かもしれません。
そして我々の「口の中の形状」にあった組み合わせで食事をすることが
体にとって自然なんです。

ロズリン:
口の中の形状ですか?どういうことでしょう。










辻 野 :
結局歯のことです。人間の歯は32本ありますが、その中で
切歯は8本。これは野菜や果物をかむための歯といわれています。
肉や魚をかみちぎるための犬歯は4本。そして穀物をすりつぶす臼歯は
20本あります。

これを多い順に並べると、穀物が5、野菜と果物が2、肉と魚が1の割合
となります。この割合で食べるのが、人間の体の形状にあっています。
そしてよくかむこと。かむことで、唾液がたくさん出ますし、消化しやすく
なりますからね。僕は玄米は100回かんでいます。

ロズリン:
100回! それはすごい。
でもそんなに主食が多くて、たんぱく質は足りるんですか? 
肉や魚が1割というのは少ない気がするのですが。

辻 野 :
たんぱく質は米や野菜からもとれます。



動物性たんぱくが少なくなりますが、日本では昔から肉はそんなに食べて
こなかったんですよ。年に数度の「ハレ」の日ぐらいです。

また最近は野菜を多くとろうという風潮ですが、葉ものばかり多くして、
それに動物性たんぱく質が多く、主食をひかえるのは、非常にアンバランス。

食養生の考え方で大事なのは、食材は丸ごといただくということ。魚は頭
から尾まで。野菜も果物も皮ごと丸ごとですね。甘いものはなるべくひかえ
たほうがいいです。


ロズリン:
辻野さんご自身、そのルールを破ることはありますか?

辻 野 :
ありますよ(笑)。
基本的に玄米と野菜を中心にして肉は食べない食生活をしていますが、
人との会食などでは肉を食べます。

それに気を巡らすには、食事の節制が一番の要因ではないんです。
気の巡りの影響を大きな順からいくと、一番が心、2番が太陽。
これは太陽光線にあたることですね。早寝早起きの習慣でもある。
3が空気、4が水、食べものは最後の5番目なんです。

だから僕は、食べる食べないを厳密にやるより、心にストレスをかけない
ように、ルールを破る時は我慢せずに気持ち良く破ることにしてます。


自分の食を変えるのに、まず調味料から見直す。

ロズリン:
なるほど(笑)。我慢はストレスになりますものね。
自分の食生活を変えようとしたら、どこから始めればいいですか? 

 

辻 野 :早いのは調味料を変えることですね。たとえば塩。
僕は「うみたま」というにがりの残した自然海塩を持ち歩いています。
よかったら食べてみてください。

ロズリン:
(口に入れて)んん、、、水気があってぬめっと
してますね。しょっぱいけど旨味があります。

辻 野 :
これはミネラル分が非常に豊富で旨味もあるんですよ。
こういった精製されていない自然海塩は、食材の味をひきたて、
体に自然にミネラル分を補うので、とても体にいい。

よく減塩といいますが、本来、塩(自然海塩)はきちんととるべきなんです。
活力のもとである「腎」の機能をよくしてくれます。

ただ精製塩は塩化ナトリウムだけなので、これは多くとるとよくない。
自然海塩はミネラル分のバランスがいいので、体も満足してとりすぎる
こともないんですね。
そういえば、昔は塩で歯を磨いていましたし、腎が強くなることで、
歯の状態もよくなるんですよ。


ロズリン:とても興味深いです。ほかの調味料の選ぶこつはありますか?

辻 野 :
たとえば醤油ですが、これは成分の中の15~20%が
塩なんです。その塩が天然塩のものを選ぶといいですね。
もしその醤油にいい塩を遣っていれば、たぶんどこかに表示して
アピールしてます。

味噌についても塩分のことは同じ。あと丸ごといただく観点で、大豆も
丸大豆と表示しているのがいいです。



僕は今、往診専門の治療院の活動をしていますが、そのさいに必要が
あれば、その方の近所のスーパーなどに一緒にいって、食材の買い物を
指導することもありますよ。
生活の中で食材を選ぶ方法でないと、続きませんからね。

ロズリン:一緒にスーパーにいってもらえるんなんて、楽しそう。
また往診専門の治療院というのも、珍しいですね。



辻 野 :「軽井沢星のや」での食養生の指導をはじめ、月の半分は
外出することになるので、常時開いている施術院はなかなか難しくて。
それでも、指導を受けたいという方のお手伝いができればと思って
始めたんです。

そら鍼灸食養治療院:http://soragroup.jp/shinryo/


自分が好きになることは一番大事

ロズリン:
多くの方の指導をされていて、食養生の観点から、現代の
方たちの様子で思うことはどんなことですか?

辻 野 :
やはり気が停滞していたり、足りていない人が多いですね。
特に気の巡りでもっとも必要な「心」に関してが大変です。

自分に正直に生きるのが一番ストレスがかかりませんが、人前ではつい
自分自身を偽ってしまいますよね。心がもっと自由になると、もっと気が
巡るようになると思います。

何より自分を否定せずに、好きになることが一番大事だと思います。



ロズリン:辻野さんご自身は、リラックスのためにしていることはありますか?

辻 野 :出張の移動時は、ほかにわずらわされることのない自分だけの空間
として、結構リラックスできますね。

あと朝早い時間です。冬場だと6時におきて、家族が起きてくるまで、約1時間半
ほど外に出て呼吸法をしたり、ゆっくり本を読んだりしています。


ロズリン:そういう時間も必要ですね。私はいつもじっとしていられなくて、
活動してしまうんですけど。

辻 野 :ロズリンさんは、非常に気が巡っている感じですから活動的なのでは?
とても健康そうで、僕のほうがその秘密をお聞きしたい感じです。

ロズリン:ありがとうございます(笑)。
辻野さんのこれからやりたいことは?



辻 野 :
食の勉強はまだまだやっていきたいですし、現代栄養学も深めて
いきたいです。また現在、星のやさんの養生プランは軽井沢だけでなく、竹富島
でも始まりましたし、今度、静岡でも開始する予定です。

徐々に僕一人だと手が足りなくなってきており、実は「食養生コーディネーター」
という資格講座も行なっているんです。

僕の活動の根底にある思いは、情報が氾濫する世の中で、より多くの人に
食の正しい情報の選び方を発信していきたいということ。
体調が悪くなった時に、こういった選択肢もあるということを伝えていき
たいんです。



育成講座を行なうことで、食と健康の関する情報を取捨選択できる仲間を
増やし、さらに食養生を広めていきたいですね。
私の野望は、日本の食文化を変えることです。

日本食事療法士協会URL:http://shokuyo.jp


ロズリン:
すばらしいです。みなさんの日々の生活にも役立っていますね。
軽井沢の森林養生もすごく興味があるので、行ってみたいです!

辻 野 :
お待ちしてます!



<インタビュー感想>

辻野さんは、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師といった国家資格を持ちながら、「食事療法士」というあまり聞きなれない職業につかれています。
お話しを伺うまでは、いったいどんなことがきっかけでこの道に入られ、また現在はどんな活動をされているのかと、大変興味がありました。

人が生きていく上で欠かせない「食」。
食事制限をするスポーツ選手や、病気やダイエットなど、何か特別なことがない限りは、その大切さはわかっていても、実際には継続的に気をつけて生活することは難しいのではないでしょうか。

辻野さんの考える「食」とは、単なる食事だけではなく、東洋医学の「気」という概念を元にしています。
太陽を浴びる、空気を吸う、水を摂取するということも含め、人間が自然に備えている治癒力を目覚めさせ、心と体のバランスをも整えること。
それを食と合わせ「食養」として体系化し、多くの方へ広める活動をされています。

私は早起きなので、近所を散歩するのが毎朝の日課になっています。
幸いにもまだ自然が残っており、少し歩けば畑を目にすることもできる恵まれた環境にいます。

早朝の澄んだ空気をたくさん吸い込んで、自然の草木を肌で感じることはたいへん気持ちよく、本当にリフレッシュできます。そして帰ってからさっそく朝風呂。
私自身は、太陽、空気、水に接するという部分は、結構実践できていたのかもしれませんね。

都会で生活をしている私たちは、自然のサイクルに合わせた生活を送ることはなかなか難しいものですが、まずは何か1つから取り入れる。
例えば、平日だけでなく、休日も含めて、毎朝同じ時間に目覚めるようにするとか、まずは塩選びから変えてみるとか。なんでもいいと思うんです!

辻野さんによれば「1つの体感は百の知識に勝る」そうですから、皆さんもまずは1つから、体感してみませんか?