台所のある幼児教室「こんぺいと」代表の
菅野満喜子さんをお迎えしての前編です。



 

今回は、子どもと食をテーマに活動を続ける、台所のある幼児教室「こんぺいと」
代表であり、最近は「子どもわくわく料理検定」も立ち上げた菅野さんにお話しを
伺います。家庭から自然の味が、家族で楽しく食卓を囲むという習慣が失われつつ
あるいまの時代、「お母さんたちの代わりに、私たちが!」という思いを込めて、
活動の幅を広げている菅野さんに話を聞きました。


ピザハウスのキッズスペースから教室スタート

ロズリン:「台所のある幼児教室」とは、ユニークです。
どのような教室ですか?



菅野作って食べて遊んで、五感を育てる教室です。

平日の午前中に幼児教室として1、2歳親子クラス、2~3歳クラスがあり、
手先遊びやリズム、体操、知育、アウトドアにクッキング、
土曜日にはおいしんぼクラスとして、3歳以上の幼児と小学生を対象に
クッキングの指導をしています。
また、月曜日は地域の親子でにぎわう食堂をオープンさせています。



ロズリン:この教室を始めたきっかけは?

菅野ちょっと長い話になりますが、私はもともと幼稚園教諭だったんです。

子育てを経て、出版社で仕事をしていましたが、あるとき取材で訪れた
ピザハウスに、いわゆるキッズスペースがありました。

お母さんたちが食事をしているときに子どもが遊べるような場所です。
それを見たとき、ここで幼児教室が開きたい! と思ったんです。
常々、食と教育がいっしょになるとすごくおもしろいと感じていたので。



そこで、店にかけあって、ランチタイムが始まる前の午前中、
キッズスペースで幼児教室を始めることになりました。

4~5年続けた後、世田谷区の等々力に教室を移し、いまの形が整いました。
ちょうど小泉政権が「食育基本法」を成立させたことが追い風になり、
子どもがたくさん集まるように。

ロズリン:「食育基本法」という法律があるんですね。全然、知らなかった!

※食育基本法の詳細については、下記URLをご覧ください。
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/

菅野家庭の食卓で伝えていくべきことを、
法律で決めなければならないなんて、私もショックでした(笑)。
でも実際、こちらの教室では、昔からお母さんが家庭でやっていたことを
代わりにやっているんです。

たとえば、教室に来た子どもに大きな大きなかぼちゃを見せて、
「ほら、みて! これ、かぼちゃなの。大きいでしょう?」。
二つに切って、「おなかの中はこんな色、種がいっぱいあるよ」「においは?」。
こんなふうに、見て、触って、においをかいでもらいます。



昔は自然に、こういった会話が家庭の台所で交わされていたはずなんです。
でも、いまのお母さんって、丸ごとのかぼちゃは買わないから。

ロズリン:カットされたかぼちゃが売っていますね。

菅野そう、だからいまの子どもたちは自然の姿を知らない。



ロズリン:たしかに、いまの都会の子供を見てると、
田舎につれて行っても外で遊ばず、すぐに家の中に入りたがる。
ゲームやパソコンに向かうことが多く、
普段自然と触れ合う経験が少ないなと感じます。

菅野:そうなんですよ。
等々力に教室を移したのも、ここは都会の中でありながら渓谷があって、
ちょっと散歩に出かければ自然と触れ合う経験がたくさんできると
思ったからなんです。


おだしの味で、日本人の味覚を体に染み込ませたい!

ロズリン:
教室では、何を教えているの?

菅野:料理の技術や栄養の知識だけではなく、大事にしているのは、
子どもが食べることに興味を持ち「おいしい!」「楽しい!」と食べることです。

それにはまず、食材自体に興味を持ってほしい。
さっきのかぼちゃの話で言うと「かぼちゃって固いよ、おなかの中は黄色いよ、
土の上にごろんとなってるんだよ。」と、味ではない“かぼちゃそのもの”を
存分に味わうことから始めています。

ロズリン:子どもは夢中になるでしょうね。



菅野:それから、おだしの味を体に染み込ませることも大事にしています。
味には5つあって、「甘み」「辛み」「苦み」「酸み」そして「うまみ」。

うまみというのはそれぞれの故郷ごとにあって、イタリア人ならトマト、
中国人なら魚介、日本人にとっては、おだしの昆布や煮干し、
かつおぶしなどの微妙な味です。

こうした日本人ならではうまみを、
ぜひ子どものうちに体に染み込ませておいてほしいんです。
市販のうまみ調味料の味はすごく強いので、これに慣れてしまうと、
子どもはデリケートな味をおいしいと感じなくなってしまいます。



いまのお母さんたちは、おだしをとる人は少なくなりましたね。
日本人の味覚を育てるのも教室の役目だな、と考えています。
教室では毎回、必ずおだしを煮て、子どもたちが教室に入ってきたときに、
おだしのいい匂いがする、ということを心がけています。

ロズリン:たしかに、子どものころに体に染み込んだ味覚は
生涯に影響しますね。
私の故郷オーストラリアでは朝から肉を食べていたので、食事と言えば肉!
いまでも疲れたときは、ステーキが食べたいな、と思います(笑)。

菅野:それが育ちというものなんです。
私は日本人だから、子どもにはごはんと味噌汁が好きな子に育ってほしいんです。

ロズリン:なるほど。次回は、教室ではどんな料理を作るのかを聞かせてください。



<菅野満喜子さんプロフィール>
 
●グループこんぺいと代表
http://www.compeito.jp/todoroki/todoroki.html

幼稚園教諭、出版社勤務を経て「グループこんぺいと」を設立。
2005年春、東京都世田谷区等々力に「台所のある幼児教室」をオープン。
現在、親子あそびのアイデア、子どものしつけ、保育者向け食育あそび、など雑誌執筆、書籍の監修、CSTV「キッズステーション」の食育番組「おやこでクッキング」監修、 東京都大田区子育て講座講師、「台所のある幼児教室」子どもの料理教室「おいしんぼクラス」担当など。

グループこんぺいと著書 
『楽しいうれしい保育・教育現場のための食育』(学研)
『食育なんでもQ&Aセレクト41』(黎明書房)
『子どもと楽しく食育あそびBEST34&メニュー』(黎明書房)
『すぐちょこシアター』(学陽書房)
『怒らないしつけのコツ』(学陽書房)
『心の保育を考える』(学研)
『食育アイデアBOOK』(チャイルド本社)他

---------------------------------------------------------------------



台所のある幼児教室「こんぺいと」
東京都世田谷区等々力3-13-2荒井ビル1F
http://www.compeito.jp/todoroki/todoroki.html
電  話:03-3704-6670

---------------------------------------------------------------------