台所のある幼児教室「こんぺいと」代表の
菅野満喜子さんをお迎えしての後編です。

 

 



大事なのは、「おいしい!」「楽しい!」と食べること

ロズリン:
教室では、どんな料理を作るのですか?

菅野:
たとえば、イカにチャーハンを詰めてスープで煮た、
オリジナルイカめし。岡山県の郷土料理で、返し寿司。
根菜と豚のひき肉団子、イワシのつみれ知るなど、いろいろなメニューを取り入れています。

ロズリン:
すごい!包丁も使わせるの?

菅野:
3歳以上の子どもには使わせます。

一人ひとりそばについて、危なくないやり方をきちんと教えれば大丈夫。
これまでにけがはありません。
子どもは技術の習得を喜びますので、すぐに使えるようになりますよ。



また、料理のときは、手を使う経験をたくさんさせます。
いまの子って、家庭でお手伝いをさせてもっていないから、手が器用にならないんですよ。

ロズリン:
それはどういうこと?

菅野:
たとえば、1歳くらいのときに離乳食を手でグチャグチャやることで、
手を使いながら感覚が育ちますが、いまのお母さんは、汚れるのを嫌って
全部スプーンなどできれいに食べさせちゃう。

そうすると、手先の器用さや感覚が育たないので、初めての園生活で、
砂場で泥団子を作れなかったり、手に砂がついて泣いたりしていまうのです。

だから、教室では、たとえば肉団子づくりなどを通して、
手の動きから教えます。こうして手のひらでクルクルって丸めるんだよ、って。



お教室には対面式のキッチンがあります。

ロズリン:
机の上でのお勉強より、ずっと脳が育ちそうです。
教室で、好き嫌いが激しい子はいませんか。

菅野:
いますね。悩んでいるお母さんも多いです。

でも、子どもの好き嫌いはほとんどが食べず嫌いですから、
本気に受け止めず、おおらかに対応するように話しています。

というのも、10歳くらいまでの子どもはまだ味覚が未成熟なので、
初めての食べ物については「食べたくない」と感じることも多いんです。



そんな時は、「わかった、あなたは食べなくていいよ」と伝えて、
お父さんお母さん、ほかのきょうだいはおいしそうに食べてみせると、
好奇心が強い子は、食べてみようかな、と思います。

あるいは、料理の途中に「ちょっとお味見してみて」と呼ぶとかね。
子どもって「お味見」大好きですから(笑)。
もちろん、お手伝いや親子で料理を楽しむのでもよいですよ。

そういった楽しい経験の記憶をたくさん積み重ねることによって、
自然に食べられるようになるんですよ。
むきになって食べさせようとすると、子どもも頑なになって食べなくなるし、
なんといっても食事は楽しいのがいちばんなので。

ロズリン:
なるほど。

菅野:
この間、「おいしんぼ教室」に初めて参加した3歳の男の子。
その日のメニューは根菜類を入れた肉団子で、その子は2つ食べて
おかわりもしたんです。



さらにもう1個の肉団子を食べようとしたときに吐いてしまった。

「無理して食べなくていいんだよ」と声をかけ、あとからお母さんに聞いたら、
なんとその子は肉が嫌いで、いままで食べたことがなかったんですって。
お友だちと一緒だから食べることができたのでしょう。

でも、お教室に来たことで、お母さんの期待、まわりの期待に応えようとして、
一生懸命食べてみた。その健気さに涙が出そうになりました。



子どもの好き嫌いをなくそうと頑張っているお母さんも多いんだけど、
やっぱり何より大事なのは、「おいしい!」「楽しい!」と食べること。
それを再認識しました。


かまない、かめない子どもが増えている

ロズリン:栄養士の方に話を聞く機会があったのですが、
最近は子どもが一人で食事をしているケースも多いそうで、さびしく思います。



菅野:最近の食の傾向を表す「個食」という言葉があります。
家族が別々の時間に、違うメニューを食べているというのが、
いまの多くの家庭の実態のようです。

ロズリン:ほかにも、菅野さんから見て、いまの家庭の食事でここが問題だな、
と思う部分はありますか。

菅野:固いものが食べられない子どもが増えていることです。
離乳食を終えるころから、あえてかみごたえのあるものを与えて
かむことを教えないと、子どもは顎が発達せず、うまくかめなくなるんですね。



よく「うちの子、早食いなんです」と相談されるお母さんがいるんですが、
そんなとき私は「早く食べられないものをあげればいいのよ」と伝えます。
野菜のステックや煮干しとかね。

ロズリン:そういえば、40数年前、私が日本に来たときは、
子どもがぐずるとお母さんたちは子どもに昆布をあげていました。
あるいは、固そうなおせんべい。いまはスナック菓子やチョコレートです。

菅野:スナック菓子やファーストフードはやわらかいので、
子どもはかまなくてすむんです。でも、それは歯のためにもよくないですよね。


「子どもわくわく料理検定」で、子どもの料理人口を増やしたい

ロズリン:今後の新たな展開は?

菅野:子どもが食に興味を持って、「おいしい!」「楽しい!」と
食べてくれるように、子ども料理人口を増やしたいと思っています。

そこで、こんぺいとで「子どもわくわく料理検定」を作りました。
「食の知識をまなぶ」「料理の技術をまなぶ」の2本の柱で
子どもの料理力を育てるための検定です。

ロズリン:それはすてきな取り組みです!



菅野:子どもって、自分で何かができるようになるということが大好きですから、
楽しみながら料理力を、そして生きる力を育んでいってくれればと思っています。

ロズリン:興味深いお話をどうもありがとうございました。




<インタビュー感想>

菅野さんとお会いしてまず驚いたのは、とてもパワフルなこと!
幼児教室や執筆をはじめ精力的に活動されていますが、そのエネルギーは、教室での子ども達からもらうものだそうです。子ども達と接することで、元気をもらい、それをお教室で子ども達に返す、仕事をする人間として、とても理想的なサイクルだと感じました。

2014年度は、辻野さん、ダニエラさん、そして菅野さんと食と健康に関わる方へのインタビューが多かったです。辻野さん、ダニエラさんはあるきっかけで“食事と健康”に目覚められ現在理想的な食事を実践されていますが、一般の方が普段の生活で食事の大切さを理解するまでには中々時間がかかります。また、病気やダイエット、スポーツなどで一時的に大切さを実感しても、継続的に行うことは難しいと思います。

ですが、子どものころに健康的な食事を“あたりまえ”として身につけることができたなら…。「食」の習慣は一生の宝物だと言えます。

共働きのご家庭で、料理に時間をさくことは難しいという方は、「買ってきたお惣菜でも、パックではなくお皿に盛りつける、1品は手料理にするなど、できることから始めることがポイント」と、菅野さんからアドバイスをいただきました。また、「こんぺいと」などでプロの手を借りるのも一つの手ですね。是非みなさんも実践してみてくださいね。

仕事をしている中で、どうしても食事がおろそかになってしまいがちですが、食は生きることの源です!楽しく、おいしく、なるべく家族で毎日のお食事を楽しみましょう!


<菅野満喜子さんプロフィール>
 
●グループこんぺいと代表
http://www.compeito.jp/todoroki/todoroki.html

幼稚園教諭、出版社勤務を経て「グループこんぺいと」を設立。
2005年春、東京都世田谷区等々力に「台所のある幼児教室」をオープン。
現在、親子あそびのアイデア、子どものしつけ、保育者向け食育あそび、など雑誌執筆、書籍の監修、CSTV「キッズステーション」の食育番組「おやこでクッキング」監修、 東京都大田区子育て講座講師、「台所のある幼児教室」子どもの料理教室「おいしんぼクラス」担当など。

グループこんぺいと著書 
『楽しいうれしい保育・教育現場のための食育』(学研)
『食育なんでもQ&Aセレクト41』(黎明書房)
『子どもと楽しく食育あそびBEST34&メニュー』(黎明書房)
『すぐちょこシアター』(学陽書房)
『怒らないしつけのコツ』(学陽書房)
『心の保育を考える』(学研)
『食育アイデアBOOK』(チャイルド本社)他

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台所のある幼児教室「こんぺいと」
東京都世田谷区等々力3-13-2荒井ビル1F
http://www.compeito.jp/todoroki/todoroki.html
電  話:03-3704-6670
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