インタビュー第8回は、フリージャーナリストの
 
香取 章子 さん
をお招きしておおくりします。






人と動物が“共に生きる”社会へ

ネコとの“復縁”がきっかけに

ロズリン:香取さんは、ジャーナリストとしてのご経験が長く、ペット動物に関する
      著書もたくさんお書きになっているほか、行政と連携した動物愛護活動
      にも熱心に取り組んでいらっしゃいます。
      まずは、それまでのご経歴を簡単に。

    

香取:最初に入った出版社では、月刊誌の編集部で生活関連のページを担当
    していました。
    その後、元同僚4人と企画・編集会社を起業したのですが、ちょうどバブル
    期で、仕事が次々に舞い込んできて、まさに仕事漬けの日々でした。

    仲間と会社を運営するのはとても楽しく、やりがいもありましたが、やはり
    本の編集や原稿の執筆をマイペースでやっていきたいという気持ちもあり
    ました。初めての本が出版されたのを機に退社して、以来、フリーで活動
    しています。

ロズリン:やはり動物がお好きだった?

香取:親が動物大好きで、家には常に犬と猫がいました。猫は、一番多いときで
    14匹。 出版社に勤務していたとき、その最後の猫を亡くして、その後12年
    間はまったく猫なし、仕事ひと筋の
生活でした。

ロズリン:どんないきさつから、ネコとの縁が再び始まったのですか。

香取:今、いっしょに暮らしているのは、取材に行く途中、近所の公園で拾った猫
    です。

    当時、生後3カ月くらいで、風邪をひいていて、目やにと鼻水でぐちゃぐちゃ
    の顔。 「助けて」と訴えるように、私の顔を見上げて、鳴いたんです。
    これは病院に連れていかなければと、抱き上げて、以前お世話になってい
    た獣医さんに連れて行きました。

自分では忙しくて猫を飼うことなどできないから
もらい手を探そうと、あちこちに聞いてみたので
すが、どの家も今ひとつ気に入らない。

もっと良い飼育環境でもっともっと大事にしてくれ
そうな家庭はないかと探しているうちに、すっかり
情が移ってしまいました。

もらい手が決まって、猫を届けに行ったら、自分
は空っぽになったキャリーバッグを持って帰らな
ければいけない。

そんなことを想像しただけで、涙がどっとあふれて
きて…結局、人に譲るのはやめました。その猫が、19歳になる“タマちゃん”です。

ロズリン:私も以前何回も、健康状態の良くないネコを拾って、元気になったら里親
       を探して、譲ったりする経験があるので、手放すときのさびしさは本当に
       よく分かります。

香取:身近にいると、ほんとにめちゃくちゃ可愛いんですよね。
    タマちゃんをもっと幸せにしてあげたい、そのためにはもっと猫のケアや健康
    管理について知っておかなければと、いろいろ勉強するようになりました。

    そして、うちの子が幸せならそれでいいわけじゃない、との思いから、動物愛護
    団体にも関わるようになりました。

    タマちゃんの“肉球”で背中を押されるようにして、猫との縁が深まっていったわ
    けです。


広がる“地域猫”サポートの輪

ロズリン:香取さんは、「飼い主のいない猫」との共生をめざすボランティアグループ
      の活動に力を入れているとか。

香取:私が生まれ育ち、現在も住んでいる東京・千代田区では、行政と区民、在勤者
    などが協働で「飼い主のいない猫」に去勢・不妊手術を受けさせ、元の場所に
    戻して、頭数が増えないようにしながら、地域で世話していこうという取り組みが
    2000年から行われています。

    たとえば、昨年1月には、秋葉原で30頭の猫を一時保護して、不妊・去勢手術
    を受けさせ、成猫21頭を元の場所に戻し、子猫など9頭を譲渡しました。

    区が手術費に助成し、ボランティアのネットワークづくりを進めているのですが、
    グループで活発に活動しているのが、区民と在勤者を中心とする「ちよだニャン
    となる会」。
    私もボランティアのひとりとして、広報活動などに参加しています。

    

ロズリン:千代田区は、動物との“共生”に対する意識が高いと言えますね。

香取:千代田区でも、かつては猫についての苦情やトラブルがずいぶんあったよう
    ですが、現在では、苦情は激減し、都の動物愛護相談センターに持ち込まれ
    て殺処分される猫の数は4分の1に、清掃事務所に取り扱われる路上死体数
    は2分の1に減りました。

    めざましい効果が上がっているということです。
    10年前、国会議事堂周辺には、60~80頭もの猫がいましたが、現在では10
    頭前後まで減っ
ています。。

ロズリン:香取さんの場合はジャーナリストという、あくまで中立の立場ですから、
      信頼も厚いのでしょう。他にも、取り組んでいらっしゃることは?

香取:新聞や雑誌への寄稿や講演のほか、千代田区の取り組みを視察に来る自治
    体の職員や議員の方々にお話する機会も多いです。

「地域猫セミナー」での講演の様子


ネコ本来の“自然”な姿とは

ロズリン:一般に、飼い主のいないネコはどのようなトラブルを引き起こすのですか。

香取:飼い主のいない猫についての苦情には2種類あって、ひとつは「排泄物が臭い、
    汚い、“餌やり”が迷惑」、もうひとつは「猫がかわいそう」と心を痛めている人か
    らの訴えです。

    「野良猫は自由でいい」と考える人がいますが、猫は野生動物ではなく、人間
    が責任持って終生飼育すべき伴侶動物です。
    遺棄すれば、動物愛護法違反で50万円以下の罰金に処せられます。

    飼い主のいない猫がいるのは、捨てられたり、引っ越しのときに置き去りにさ
    れたり、迷子になっても探してもらえなかったり、不妊・去勢手術が行われな
    いまま放し飼いにされるなどの人間の身勝手な行為があったからです。

    路上で暮らす猫たちに、人間は手を差し伸べる必要があります。

 

ロズリン:法的な整備もかなり進みましたが、実効性という点での感触は?

香取:2000年に施行された動物愛護法では、飼い主がいるかどうかに関係なく、
    猫を虐待した場合は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となって
    います。

    2006年の改正
で罰則が強化され、きちんと世話しなかったり、遺棄したら
    50万円の罰金です。

    東京では現在、23区のうち18区が手術費に助成するようになりました。
    動物愛護への意識は大きく高まっています。


インタビューは後編へと続きます。お楽しみに!


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