3月6日にアップした第8回インタビュー後編です。

今回はフリージャーナリストの 香取 章子 さん をお招き
しております。







大らかに、でも責任ある愛情を

ロズリン:高齢者層にありがちな、「動物は自然のままがいい」といった
      旧い考えや意識を変えることは、やはり難しいのでは?

香取:ひと昔前の日本では、飼い猫も飼い主のいない猫も街の風景として
    受け入れるような、ある意味、大らかな風土がありました。

    そうした猫に対する寛大さは残したいと思いますが…。 例えば昔は、
    猫は家の軒下で生まれ、路地裏を歩いていましたが、今ではそんな
    軒下も路地裏も無くなりましたよね。

    現代の都市で、猫が人の世話を受けずに暮らしていくのは、とても大変
    なことです。雨が降ったり寒さが厳しくても、セキュリティがしっかりした
    建物ばかりでは、もぐりこむこともできません。

    車にひかれる危険が高く、死んだときも、アスファルトやコンクリートで固
    められた地面では、土に還ることもできません。

    「猫は自然なままがいい」と、去勢・不妊手術を行わず、放し飼いにしたり、
    迷子になっても熱心に探そうとしないのは、「不作為」の遺棄といってよい
    のではないでしょうか。 「どこかで幸せになっている」というのは、都合の
    よい解釈でしかありません。

ロズリン:近年は、外で交通事故に遭って死ぬネコも非常に多くて、胸が痛み
      ます。



香取:ひと昔前は、猫が家の中と外を自由に行き来するのは自然なことだった
    かもしれませんが、私としてはやはり室内飼いをおすすめしたい。

    猫は、自分のテリトリーが守られてさえいれば、快適に暮らせる動物です。
    たとえ人間が狭いと感じるような家でも、ほかの人や動物に侵害される心配
    がなければ、そこは猫にとって居心地のよいテリトリーとなります。

    子猫のときから家の中だけで育てて、適切な時期に去勢・不妊手術を受け
    させれば、猫は家の中だけをテリトリーとして、安全で快適に暮らせます。

ロズリン:最近は、分譲マンションでもペット飼育OKという物件が増えてきました。

香取:1998年ではペット可の物件は全体の1%でしたが、今は分譲の9割、賃貸
    でも50%が、小型犬や猫であればOKです。

    マンションでペットと暮らす人が増え、犬も猫も室内飼いが増えましたが、
    ひとつ屋根の下でいっしょに暮らせば、人と動物のきずなはさらに深まり
    ます。


被災地で見た、悲しいペットたち

 ロズリン:1995年1月の阪神・淡路大震災では、被災
        した
ペットを救護・支援するボランティア活動
        に参加されたそうですね。

        そのときのことを伺えますか。

 
 香取:発生から数日たっても、多くの人が瓦礫の下に
     生き埋めになっていて、こんなときにペットの救護
     を訴えれば反発されるのではないかと、動物愛護
     団体でさえも二の足を踏んでいるような状況でした。

私は、犬や猫がかわいそうでたまらず、また、ペットのいる被災者に何かしてあげら
れないかと考え、東京から一人で被災地へと向かったのです。

ロズリン:あのときは、世界中から動物愛護団体がペット支援のために駆けつけまし
      たが、人も情報も大混乱だったでしょう?

香取:地震発生から8日目、大阪の梅田で関西の動物愛護団体の女性と合流して、
    20㎏入る登山用のリュックにペットフードをぎっしり詰めて背負いました。

    阪急電車で神戸に近づくと、線路沿いの家のほとんどが倒壊していて、「これ
    が神戸か」と息をのむほどの惨状でした。 電車の中がしんと静まり返ったの
    を覚えています。

    体力に自信がないのに重い荷物を背負って、歩き始めた当初は、「これは無
    理かも」と思いましたが、結局7時間、歩き続けました。

ロズリン:家や飼い主を失ったり、はぐれたりしたペットたちは、どこにどうしていた
      のですか。

 香取:道路脇の木につながれた犬に出会いましたが、
     それはどうにか無事だった近所の人たちが、なん
     とか世話しているということでした。

     さらに歩いて行くと、そういうケースに次々と出会
     って…。

     上空からはヘリの爆音が、地上では救急車やガス
     工事の車輌のサイレンが鳴り響き、辺りはすさまじ
     い騒音にひっきりなしに見舞われていました。

     そんな中、一匹のビーグル犬がぶるぶる震えてい
     る。近くにいた男性に犬のことを訊ねたら、飼い主
     の家では、お母さんと小学生の男の子が亡くなっ
     ていて、他の家族も入院しているので、とりあえず
                       自分のところで預かっている、ということでした。
                       胸が詰まりました。

ロズリン:怖くて心細い思いをしたのは、ペットたちも全く同じだったでしょうね。

香取:こうした過去の大災害の経験を踏まえて、準備と対策のポイントをまとめたのが
    『犬と猫のための災害サバイバル』(学研、2002年)です。
    実際のエピソードから、いざというときに
ペットの命を守るヒントが学べたらと思い
    ます。

ロズリン:ペットの安全について日頃からの心構えを作る上で、大変参考になります。
      こうしたことも、これからはもっと広く関心を高めていく必要があると思います。


香取:もう一つ『ペットロス』(新潮社、2004年)は、愛するペットを亡くしたとき、その悲し
    みを乗り越える手助けができればと思って書いたもの。
    飼い主は、「あのとき、なぜあんなことをしたんだろう」「なぜ気づいてやれなかった
    のか」という後悔に長いこと苛まれて暮らすことが多いものです。

    でも、悲しいのは当たり前。ただ、それをあまりにも大きな傷にしてしまわないよう
    に、そして悔いを残さないようにしよう、と呼びかけています。


共に幸福を生きるパートナーとして

ロズリン:昨年は我が家でも、飼っていた3匹のイヌたちが老いで次々に死んでしまって、
      さびしくなりました。

      主人はまた飼いたいと言いますが、最近は最寄りの保護センターで譲ってもらう
      にも3ヵ月待ちだそうです。 

      つまり、少なくとも神奈川県では今、殺処分されるイヌがほとんどいないという。

香取:東京都でも、持ち込まれた動物をたやすく引き取ることはありません。
    どうしても飼えないのなら、新しい飼い主を探すよう、説得しています。
    
    殺処分される犬・猫は大幅に減っていますが、近年、飼い主が高齢になって世話が
    出来なくなり、ヘルパーさんが持ち込むケースが目につくようになったと聞きました。
    
    高齢者とペットへの支援が必要になってきていると思います。

ロズリン:イヌよりも自分たちのほうが先になるのでは…という不安は、私たちにもないと
      言えば嘘になります。

香取:私自身は1998年、急性心筋梗塞で倒れました。ストレスで過労死寸前のところだっ
    たんですよ。
    奇跡的に回復してからは、もう無理な仕事はしない、年金を待つだけ…(笑)と、のん
    びりいくことにしましたが、一昨年の暮れに、正式な遺言書を作成しまして。
    猫を引き取ってくれる人に対するインセンティブなども、きちんと記しました。

    そういうわけで、今のところは共生社会の一員としてのボランティア活動が本業みた
    いなものですね。
    特に“飼い主のいない猫問題”は、これからも私のライフワークです。

ロズリン:これからもお身体をいたわりつつ、地域のネコたちの味方としてますますご活躍
      されますよう、期待しています。



<インタビュー感想> 

香取氏との出会いは、彼女が著書「猫への詫び状」(新潮社)を執筆中に、取材をお受け
したのが最初です。

お話したとおり私自身も動物が大好きで、拾ってきた猫や犬をケアしては里親に出すとい
うことをやっており、最も多い時には家にも犬猫合わせて十数匹以上はいたと思います。
外人の友達に引き受けてもらった日本ののら猫も今は優雅に、アメリカやオーストラリア
で暮らしているのです。

香取氏のようなジャーナリストという中立的立場からの声は、非常に影響力があります。
千代田区から始まり、日本全体の環境改善に向けて、今後も香取氏の活動に期待した
いです。 

また私自身、これからも弱い動物達を救う一助を担えたらと思っています。

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